日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
創設期の固定資産税における資産評価問題
―土地・家屋評価の地域間の均衡化を中心として―
根岸 睦人
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2014 年 21 巻 p. 58-78

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抄録

 今日の固定資産税における資産評価には,評価の権限を市町村に認めつつ,評価額を左右する重要な要素を政府が定めるという特殊な政府間関係が形成されている.本稿の目的は,創設期の固定資産税においてこの政府間関係が形成された経緯と,それが市町村の固定資産評価に及ぼした影響を明らかにすることである.そこで,終戦直後の地租・家屋税改革論,シャウプ勧告における不動産税,資産評価体制の整備を支援するためGHQが日本に招聘したジョン・キースの報告書,そして1952年に導入された平均価額制度に注目し,その改革論の意義や諸制度の役割を分析した.その結果,固定資産評価には評価の均衡が要請され,それは負担の均衡の実現という税負担の問題だけでなく,市町村間の税務行政能力の脆弱さや格差への対応,地方財政調整制度における課税力の適切な測定という政府間の財政関係のあり方にも関係して要請されていたこと.一方で,戦後地方団体による地方税の自主的な運営も要請されており,両立し難い両者の要請を受けとめるべく政府間関係が形成されたこと.しかしその実態は,市町村に評価の権限を認めつつも評価における役割を狭く限定し,政府が評価に深く関与し評価額をコントロールし誘導する仕組みであり,今日の政府間関係の原型ともいえることが明らかとなった.

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© 2014 日本地方財政学会
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