著者らは, 植物種子分泌液に検出されたアレロパシー活性における有機物および無機物の貢献度を明らかにすることを目的として, 14科24属からなる24種の植物種子の分泌物およびその灰化物を, ヒモゲイトウ下胚軸伸長試験に供し, それぞれの生物活性について比較検討した。
その結果, (a)分泌物の活性が, 灰化処理によって失われたか, あるいは減少した植物種 (オオイヌノフグリ, パセリ, イネなど14種), (b) 分泌物の活性が, 灰化処理によって増大した植物種 (カボチャ), (c) 分泌物の活性が, 灰化処理した後もほとんど変化しなかった植物種 (ゴボウ, ヒマワリなど9種) の3つのタイプに分類された。以上のことから, 植物種子分泌液中に存在するアレロパシー活性は, 灰化処理によって消失する有機物 (成長促進および阻害物質) および灰化物中に存在する無機物の双方より由来することが明らかとなった。また, 多くの植物種において, 種子分泌液中に含まれる有機物がアレロパシー活性に関与していることが示された。
種子重量と分泌物あるいは種子重量と灰化物の活性との相関を求めたところ, 前者ではr=0.66, 後者ではr=0.83という相関係数が得られた。これより, 植物種子分泌液に含まれるアレロパシー活性のうち灰化処理により得られた無機物の活性は, 植物種に関係なく種子重量に依存するが, 灰化処理によって消失する有機物の活性は, 植物種に特異的である可能性が示唆された。
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