乳癌集検で要精検とされて昭和60年4月から平成6年12月までの9年8カ月間に長野県がん検診センターの乳腺外来を受診した1,431例に対する検診医の触診および超音波診断の診断能を集検受診前の自覚症状の有無から比較検討し, さらに著者の診断能とも対比して, 以下の結果を得た。
1) 1,431例の受診者中, 自覚症状があった症例は345例 (24.1%) であり, うち28例 (8.1%) が乳癌症例であった。
2) 乳癌症例の頻度は乳房変形群が28.6%と最も多く, ついで腫瘤触知群10.7%, 乳腺痛群6.5%の順であり, 自覚症状がない群は3.4%であった。
3) 年齢別にみて自覚症状があった群の方がなかった群より乳癌症例の頻度が多かったが, 有意差は認めなかった。年齢層が増すにつれて乳癌症例の頻度が多くなる傾向がみられた。
4) 検診医の触診の診断能は自覚症状の有無に左右されたが, 超音波診断は左右されなかった。
5) 著者の触診の診断能は自覚症状の有無に左右されなかったが, 超音波診断は多少左右された。
6) 検診医の触診および超音波診断の診断能が著者と比べて低かったことから検診医の診断能を向上させるための行政的対策が必要であると考える。
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