関東平野北部に
雷雨
が発現した日に特徴的な大気垂直構造を知ることを目的として,館野の9時の高層データと前橋で観測された最高気温を使用して,1967年および68年の5月15日~9月15日の248日間について,大気の垂直安定度を求めた.
大気は1,800mを境として上層と下層に分けた.対流雲を取り囲んでいる環境である上層では,湿潤不安定度を問題とした.下層は,対流雲へエネルギーを補給する層であることを強調して,層中の気塊の垂直移動の難易を問題とした.上層における垂直不安定度を表わす指標として,周囲大気の吸い込みを行なう飽和気塊の上昇速度を計算し,これの最大値を採用した.
上層がかなり湿潤不安定であった日のうち,
雷雨
が発現した日はその約半数の日であった.しかし
雷雨日と上層が不安定であった無雷雨
日とでは,下層の状態が異なっていた.すなわち,上層が不安定であった無
雷雨
日は,
雷雨
日に比して下層がより安定であり,前橋での最高気温を用いて地上から1,000mまでの層を代表させた気塊の自由対流高度は,平均的に高かった.さらに
雷雨
日には,上層の湿潤不安定度(Iu)と下層の安定度(SIL)とは,.SIL<0.075•Iu+2なる関係を満していた.
これらの特徴は対流雲と雲底下層との相互作用を示している,と解釈し,不安定指数を定義した.この不安定指数の平均値は,
雷雨
日では11.8無
雷雨
日では3.6となり,不安定指数の大きい口に
雷雨
の発現する確率は高くなった.この不安定指数と
雷雨
の発現との相関は,Showalterの安定指数と
雷雨
の発現との相関より,はるかに強かった.従って,
雷雨
の発現と大気の垂直安定度との間には,今まで考られていた以上に強い関係が存在すると考えられる.この報告は,国立防災科学技術センター気象調節に関する特別研究の1部としてなされたものである.
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