1999年7月, 精神病院の入院患者である60歳代の女性が肺結核 (喀痰塗抹陰性, 培養陰性) として保健所へ届出された。この患者を発端として, 2001年3月までのおよそ2年間に, 入院患者等8名, 職員2名の計10名の肺結核患者が届出された。これらの結核患者のうち, 培養陽性となった3名の菌株についてRFLP検査を実施したところ, すべて同一系統の菌株であることが判明した。このことから, 結核院内集団感染と考えられた。定期外健康診断では感染源と考えられる患者は発見されなかったが, 退院患者等を検討したところ死亡退院患者で肺結核の可能性のあった者が1名浮かび上がった。この患者は死亡直前の胸部CT検査で空洞を認め, 喀痰PCR検査で結核菌群陽性であったが, 保健所への届出もなく, 放置されていた。また, この患者は発生した結核患者のほとんどの者と長期の接触があることが判明した。このことから, この患者が集団感染の感染源であると推定された。精神病院等の患者が長期療養する施設では, 定期的な胸部X線検査や呼吸器症状を有する患者への抗酸菌検査など, 適切な結核対策が必要であると考えられた。
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