装用児自身による補聴器の音響利得の設定が何歳頃から可能なのかという点を, 21例の難聴児を対象にAided Hearing Thresholdと単音節聴取弁別能力との縦断的変化の特徴を検討することにより考察した.その結果, 単音節の聴取弁別能力が発達したのは4歳~7歳で, その期間に難聴児自身に音響利得の設定をさせたところ, 聴取弁別能力の発達に伴って補聴器の音響利得を増幅させる傾向がみられた.逆に, 聴取弁別検査で無作為反応をしている難聴児の中には就学期以降の年齢でも十分な音響利得を得られない状態でボリューム設定している者がいた.これらの違いは, 補聴器を介して得られる聴覚的情報を難聴児自身が有用なものとして捕らえられているか否の違いであると考察した.
以上のことから, 難聴児自身に補聴器の音響利得を選択させるには, 聞くことに対するモチベーションの獲得が前提条件となり, 4歳頃から可能であると考えられた.
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