Radopholus属の線虫のうち, Rice-root nematodeと呼ばれる
R.oryzaeはジャバのイネから発見され, VAN BREDA DE HAAN (1902年) によつて
Tylenchus oryzaeとして報告された線虫であり, ジャバでは本種についてはmentekと呼ばれているイネの病害との関連性において長い間, 試験が行なわれ、てきている.VAN DER VECHT and BEAGMAN (1952年) は両者の関連性について一連の試験を行ない, この線虫の分布と量とがmentek病の発生と相関が無いことを報告している.同氏等によれば
R.oryzaeの卵は4-5日で孵化し卵から産卵雌成虫になるまでの期間は1ヵ月以上をこえないといわれる.また寄主植物については24種の雑草の根から検出し, そのうち16種はかやつり草科に, 6種は禾本科に属していた.
静岡農試の調査によれば
Radopholusは灌漑水によって伝播され, 乾燥に対しては強くないものの如く, 福島農試 (1960年) の調査によっても棲息数は湿田が最も多く, 半湿田・乾田になるに従って減少し, Eh
6との関係については, 還元状態の強い水田に寄生数が多くなる傾向をみとめている.
Radopholus属の線虫は若い根の表皮から組織中に侵入し, 根の柔組織内を移動して細胞を破壊し, 線虫が産出する毒素によって細胞の中毒をおこし根を腐敗させるといわれている.したがつて静岡農試の調査結果にも見るように1株に数100-1000匹余の線虫が寄生している株では, 全くイネの生育に影響がないとは考えられない。
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