本実験では, フィルムマルチ下の同一深における地温測定値のバラツキを主に気象要因との関係から明らかにし, さらにそれらの結果を用いてマルチによる地温上昇の効果について検討した。マルチ資材として使用したフィルムは, 透明ポリエチレンフィルム(0.04mm厚), 紫色ポリエチレンフィルム(0.03mm厚), 黒色ポリエチレンフィルム(0.03mm)の計3種である。
1) 地温のバラツキは地中の深さ, 及び時間帯によって特徴があった。夜間では, 透明マルチ区の地温のバラツキ(0~30cmの深さ平均で0.2~0.8℃の標準偏差)は無マルチ区の場合(同0.2~0.5℃)とほぼ同じ程度に小さかった。しかし, 昼間になると, 無マルチ区が0.1~1.7℃(地表面以外の各深さ平均)に対してマルチ区では0.3~0.9℃(地表面以外の各深さ平均)となって, マルチ区では無マルチ区に比べて昼間の変化が小さくなる傾向にあった。
2) 土壌水分含量が, 同じ深さに埋設された個々の地温センサーの各指示値, つまり地温のバラツキへ及ぼす影響は大きいものと推定された。また, 気象要因が地温のバラツキへ及ぼす影響はマルチ区と無マルチ区で異なり, 透明マルチ区では日射量が, 無マルチ区では土壌水分による影響が大きいものと考えられた。
3) 各種のフィルムマルチによる地温の区間比較の方法を提案し, 同一深における地温の測定点が10点である透明マルチ区と無マルチ区の場合 (Table 3) と, それが1点である紫色マルチ区と黒色マルチ区の場合 (Table 4) とで試みた。
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