Antiphospholipid syndrome (以下Aps) は, 臨床症状として静脈血栓症, 動脈血栓症, 習慣性流産, 血小板減少症などを呈し, 検査上ではLupus anticoagulantまたは中濃度以上のIgGかIgMの抗カルジオリピン抗体の陽性によって診断される比較的新しい疾患概念である。
今回われわれはITP患者に合併したApsと思われる症例を経験したので, 報告する。
患者は70歳女性で, 約8年前打撲により広範な皮下出血斑出現のため近医受診し, 検査にて血小板減少を指摘された。同医より某大学病院に紹介されITPの診断を受けた。平成6年4月頃より8〓の疼痛を自覚し抜歯を希望するも, 平成4年に〓8抜歯の際, 後出血がみられた既往があった。
術前検査で血小板数は4.6×104/μlと低値を示した以外に, 凝固系検査でPTTが200sec (対照100sec) と延長しており, 後日の再検査でもAPTT 115sec (対照50sec) と異常値を示した。同時に測定した凝固因子量でもFVIII 25%, FIX 23%, FXI 58%, FXII 18%といずれも極めて低値を示し, 一見多凝固因子欠乏の様相を呈した。APTT補正試験では, 既知凝固因子欠乏血漿が正常血漿1/4添加でほぼ補正されたのに対し, 患者血漿は3/4添加でも完全に補正されず, 何らかの抗凝血素の存在が強く疑われた。そこでLupus anticoagulant (LA) と抗カルジオリピン抗体の検索の結果, LA陽性および抗カルジオリピンIgG抗体が中濃度以上検出され, Apsと考えられた。
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