今回, われわれは, 頸部分枝再建術を併用し, ステントグラフト内挿術を施行したハイリスク遠位弓部大動脈瘤の1例を経験したので報告する. 症例は, 69歳, 男性. 瘤は左鎖骨下動脈を含む遠位弓部大動脈に位置し, 多発性脳梗塞, 認知症, 腎機能障害などの合併症を有することから, 従来の外科手術ではリスクが高いと判断しステントグラフト内挿術を選択した. 手術は頸部分枝に対し, 両側腋窩動脈交叉バイパスを施行し, その中央より左総頸動脈にバイパスを施行して, 脳血流を確保したのちにGORE TAGを左総頸動脈中枢から留置した. 瘤内への造影剤漏出なく正確な位置に留置し得た. 術後経過は良好で, 合併症を認めなかった. ハイリスク遠位弓部大動脈瘤に対し, 頸部分枝再建を併用したステントグラフト内挿術は有効であったと考えられた.
抄録全体を表示