ジオパークは「持続可能な地域社会へ貢献するしくみづくり」を進めるプログラムである。「地質遺産の保護」,「教育」,「持続可能なジオツーリズム」の3つが活動の柱となるが,ジオツーリズムは,観光客数の増加や経済効果といった既存観光への貢献とともに,「地質遺産の保護」,「教育」,「持続可能なジオツーリズム」のそれぞれの活動がどのように関連し合い,互いの効果を高めているのかを検討しなければ客観的な評価は得られにくい。
ジオツーリズムの担い手はガイドである。ジオツーリズムの醍醐味は,ジオパークの理念を理解した質の高いガイドを介して,地域の地質遺産の価値や,地域の自然や社会を成立させているジオストーリーなどを楽しむところにある。児童・生徒を対象としたジオツーリズムでは,教職経験を持つガイドが「教科書と地域をつなぐ」教育的効果の高い内容のガイドを提供し,ジオツーリズムを通じてジオサイトを何度も訪問することで,それぞれのガイドが現場の小さな変化に気付くことができるモニターとして保護・保全の担い手にもなっている。さらにガイドが有する防災や安全管理に関するスキルは,ツーリズムにおいて観光客を守る「観光防災」の役割を果たす。このようにジオパークガイドには,ツーリズムのみならず,保護・保全,教育,防災など多面的な役割を期待することができる。
「海洋プラスチック」問題が社会的な注目を浴びている。日本において海洋プラスチックを含む「海ごみ」が問題視され始めたのは1990年頃のことで,飛島をはじめとした全国の離島の現状が発端となり,2009年に超党派による議員立法「海岸漂着物処理推進法」が制定された。飛島では来年で20年目となる「飛島クリーンアップ作戦」が行われ,近年では海の環境学習と保護・保全活動がセットとなった「とびしまクリーンツーリズム」が実施されている。
現在,飛島では避けがたい人口減少と向き合いながら,IUターンの若者たちを含む地域住民や,行政,大学,研究者,NPO,ボランティア団体,ジオパーク協議会などが協力しながら,未来志向の地域づくりに取り組んでいる。多面的な役割を担うツーリズムは,島に関わる多様な主体を吸引し,持続可能な地域社会に貢献する新しいツーリズムのかたちとして期待されている。
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