いわゆる施設農業の新しい環境要因として,最近光の質が注目されているが,林木の育成部面でも応用できないかという課題が出きれたので,タネの発芽から苗木への諸段階に対する光質の作用性を検討することにした。ここでは,制御環境下で,それぞれ可視光の特定波長域を選択的に減らすことができるカラープラスチックをかけて育てたメバエの生長を予備的に報告する。クロマツのメバエは,ここで用いた温度,日長条件では光質に対してほぼ同じ反応を示した。赤色光域が少ない光線下では,伸長生長は著しく促進されるが,乾物生産が極めて少なく,したがって地上部の充実度が他の光線下より著しく少ない。一方,ダケカンバのメバエの光質に対する反応は,日長条件によって異なる。長日条件では赤色光の少ない光線下で伸長が促進されるが,短日条件では青色光の少ない光線下で促進される。青色光の少ない光線下でのこのような伸長促進の程度は温度条件によって異なった。トドマツのメバエの光質に対する反応には,クロマツの場合とほぼ同じ傾向がみられたが,8時間日長の場合には,実験期間(2か月)には初生葉,上胚軸とも殆んどのメバエでみられなかった。長日条件下での反応をみると,頂芽形成は光質によって異なるように思われる。スギについては,1年生の実生苗木を3つの変温条件で育てた結果,赤色光域の少ない光線下では徒長するが茎端数が少なく,一方,青色域の少ない光線下では伸長量は少ないが茎端数が多かった。
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