症例は70歳の男性で,嚥下時のつかえ感にて近医を受診し,胸部下部食道に1型腫瘍を認めて入院したが,38度以上の発熱が続き,当院に転院した.血液検査では白血球が18,100 /mm
3, CRPが22.64 mg/dlと高値を示した.転院後も39度以上の発熱が毎日続き,白血球20,500 /mm
3, CRP 25.09 mg/dlと高値が持続した.血中G-CSFが64 pg/ml(正常値18 pg/ml以下)と高値でありG-CSF産生性腫瘍と診断した.化学療法は行わずに手術を行い,食道中下部切除術・2領域郭清・亜全胃管・胸腔内吻合術を施行した.病理組織学的検査では腫瘍部には上皮成分と非上皮成分があり,食道癌肉腫と診断した.GCSF免疫染色検査は腫瘍細胞の胞体に陽性であった.TNM分類による進行度は,pT2, pN0, M0, pStage IIAであった.術後の経過は良好で,熱・白血球・CRPとも正常化し,術後38日目に退院した.術後5年を経過して再発の徴候はない.
抄録全体を表示