ヒスチヂンの胃腺細胞分泌機能に及ぼす影響を検索しようと考え, 無蛋白食に塩酸ヒスチヂンを加えた著者のヒスチヂン食でラッテを10日及び20日飼育し, 無蛋白食及び正常の人工食で同一期間飼育した例と比較検討した. ヒスチヂン食飼育例では, 蛋白質の欠乏は無蛋白食例と相違しない筈であるのに, 給食後の productin 空胞の消長は正常例と相似し, また胃腺主細胞, 壁細胞の分泌機能は正常例と相似するのみでなく, 時にはこれを上回る旺盛さを示し, 無蛋白食飼育例の所見とは明白に相違した. 依って無蛋白食で飼育した場合の胃腺細胞が分泌機能を営む能力を保有するかどうかを確めるべく, 先ず塩酸ヒスタミンを皮下注射したところ, 胃腺主細胞の分泌物放出機能以外は正常動物に於けると同様, 或は殆んど同様に営まれうることを確め得た. 次で胃粘膜表在細胞から productin を分泌させ productin による胃腺細胞分泌機能の営みを見るためにアセチールヒョリンとエゼリンを混合して皮下注射したところ, 意外にも表在細胞の productin 空胞は少数しか放出されず, また胃腺主細胞では辛うじて分泌顆粒新生への機能的動きを推察出来る程度のプラストゾームの形態変化しか認めることが出来なかった. かかる結果から, 蛋白質の欠乏は胃腺主細胞の分泌物放出機能と胃粘膜表在細胞の productin 放出機能を障害することと, 若し productin と同様に imidazol 核をもつところのアミノ酸, ヒスチヂン, が食餌中に存在すると, 蛋白質は欠乏していてもこの障害が防がれることを認めることが出来た.
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