規制活動には,官(規制者)民(被規制者)の複雑な役割分担が見られる.本稿ではまず,官民の役割分担の手段・制度を,規制者側の裁量幅という尺度を念頭に置いて整理する.その上で,社会管理のミッションを負った規制機関が,ある官民協働の手段・制度を選択した条件やそこでの考慮事項,及び,当該手段の実効性について,分析する.具体的には,電気用品安全法に基づく規制と,VCCI協会による自主規制を採り上げ,両者の手段・制度における違いが,初期条件の違いのみならず,規制対象の事故・障害等の危険性・規模・頻度,手段選択時における規制対象技術の進展・変化(の見込み)における違い,実効的な規制を行うための資源を民(被規制者)がどれほど有しているかといった点,及び,1980年代以降の規制改革が直截に影響したか否かという観点からも説明され得ることを論じる.その上で,そこから社会技術論に対するインプリケーションを抽出する.
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