【目的】 本研究の目的は,脊椎圧迫骨折(圧迫骨折)患者の在院日数に影響する因子を調査することによって,提供体制や問題点を明らかにすることである.
【対象および方法】 2012 年7 月1 日から2014 年7 月31 日までに圧迫骨折の診断で入院した165 例(平均年齢
76.0±12.6 歳)を対象とした.在院日数の中央値(35 日)を基準に,A 群(在院日数≦35 日,82 例)とB 群(在院日数>35 日,83 例)に分類し,患者背景,治療経過,転機を比較検討した. 【倫理的配慮】 本研究は既存カルテのみから抽出した後ろ向き研究であり,個人が特定されるデータは残さず,全て数値化し分析を行い,結果の公開に際しては研究対象者のプライバシー保護に十分配慮した.
【結果】 患者背景は,年齢,性別,Body Mass Index,既往歴,骨折椎体数,入院前の移動形態は2 群間で統計学的な有意差を認めなかった. 治療経過は,理学療法開始日は統計学的な有意差を認めなかった.A 群はB 群より鎮痛剤使用が多く(65% vs 46%,p=0.01),歩行開始日(15.2±3.9 日 vs 18.8±6.6 日,p<0.01)は早かった.A 群はB 群より退院時に独歩の割合が多かった(45% vs 25%,p<0.01). 転機は,A 群がB 群に対して退院先が自宅の割合が多かった.(75%vs56%,p=0.01)【考察】 本研究では,年齢,既往歴,骨折椎体数,入院前の移動形態,理学療法開始日は2 群間で差を認めず,同等であった.A 群は鎮痛剤使用が多く,疼痛管理が良好であったことにより,歩行開始が早期となり,廃用症候群を最低限に留めたことで,独歩の獲得率が高くなり,自宅への退院が多かったと考えられる。
【まとめ】在院日数は疼痛管理により,早期に歩行を開始することで短縮できる可能性を示した.
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