本稿は,ソーシャルワークの固有性再考の手がかりのひとつとして,坪上宏氏(元日本福祉大学教授,「やどかりの里」やどかり研究所長,2000年12月逝去)のソーシャルワークにおける援助関係論(以下,坪上援助関係論と略す)の中核的概念である「循環的関係」概念の検討を通して,坪上援助関係論に内包する援助者の「変化」の意味について考察を行ったものである。坪上援助関係論における援助者の「変化」の意味とは,普段は意識することのない援助者自身の言動の背景にある「都合」を意識の盤上にのせ,逃げることなく自身の「都合」を見つめ直し,その結果としてこれまでの物事の認識の仕方が「変化」することを意味する。そしてこの「変化」を援助者に可能にさせる関係が,相手を通して自分の都合を見直す「循環的関係」を土台とした援助関係なのである。
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