Anthropological Science (Japanese Series)
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原著論文
日本人第3大臼歯先天欠如者における他歯の大きさおよび大臼歯形態
山田 博之近藤 信太郎花村 肇
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2005 年 113 巻 2 号 p. 109-117

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抄録

第3大臼歯の先天性欠如にともなって他歯の大きさ・形態がどのように変化するかを調査した。対象は日本人成人男性169名である。第3大臼歯の欠如様式により歯の大きさは4歯存在群,片側欠如群,両側欠如群,4歯欠如群の4群に,形態は4歯存在群,片側・両側欠如群,4歯欠如群の3群に分けて上・下顎を別々に分析した。
歯冠近遠心径では第3大臼歯が欠如した3群は4歯存在群よりもほとんどの歯で大きな値を示していた。とくに4歯欠如群は4歯存在群よりも上・下顎第1・第2大臼歯が有意に大きかった。すなわち,第3大臼歯が4歯とも欠如すると,上・下顎の第1・第2大臼歯の近遠心径はとくに強く影響を受け,大臼歯列長を代償していると考えられる。
第3大臼歯欠如による残りの歯の変動は4歯存在群よりも欠如群で,下顎歯よりも上顎歯で一般的に高くなる傾向があるが,歯種や欠如歯数においては必ずしも欠如群がすべて高くなるとは限らなかった。
歯冠形態では咬頭数および溝型とも上・下顎第1大臼歯は欠如した群と4歯存在群の間に有意な頻度の違いは見られなかった。上・下顎第2大臼歯においては,下顎大臼歯溝型がX型になる頻度は4歯欠如群の方が4歯存在群や片側・両側欠如群よりも有意に高かった。咬頭数については上・下顎とも4歯存在群と欠如群の間に有意な違いは見られなかった。第3大臼歯の欠如と残りの大臼歯歯冠における退化傾向を示す形質をみると,少なくとも下顎第2大臼歯溝型は第3大臼歯の欠如に同調して退化的なX型を示していた。

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© 2005 日本人類学会
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