日本消化器内視鏡学会雑誌
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ステロイド治療中にみられた胃潰瘍の検討
吉川 信夫笠貫 順二今泉 照恵渡辺 東也鈴木 康夫岸 幹夫吉田 尚
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1990 年 32 巻 8 号 p. 1887-1892

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抄録

 ステロイド治療中の患者に胃潰瘍が高率に発生することはよく知られている.ステロイド剤と胃潰瘍との関係を検討するために,昭和52年から63年までにステロイド治療中の388例の患者に対して上部消化管内視鏡検査を施行し,38例(9.8%)に胃潰瘍を認めた.さらに38例の胃潰瘍が見られたステロイド治療中の患者のうち26例(68.4%)で潰瘍は前庭部に存在し,この値は対照と比較して有意に高率であった.しかもこれらの前庭部潰瘍のうち16例(61.5%)は多発性潰瘍であった.また,ステロイド治療中の胃潰瘍の発症前の内視鏡所見が判明する19例のうち6例(31.6%)で潰瘍は瘢痕からの近傍再発であった.以上より内視鏡検査所見からステロイド治療中の胃潰瘍において(1)前庭部多発型,(2)再発型の2つの型が特徴的であった. 38例のステロイド治療中の胃潰瘍患者のうち14例(36.8%)で腹痛・タール便などの症状は認められなかったことから,ステロイド治療中は症状が無い場合でも内視鏡検査が必要であると思われた.

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