日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
嚥下障害の機序と治療, リハビリテーション
藤島 一郎
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2000 年 37 巻 9 号 p. 661-665

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抄録

嚥下障害は古典的な口腔期, 咽頭期, 食道期の3期分類から概念を広げ食品の認知や取り込み, 咀嚼食塊形成などを含む, 広い捉え方をされるようになっている. 嚥下障害で問題となるのは誤嚥と栄養障害, 食べる楽しみの喪失である. 従来, 医療の現場では安全性を優先する立場が強く, 誤嚥性肺炎の危険がある場合には経管栄養を優先する対応がとられてきた. しかし, 嚥下障害を十分理解し検討した上で対応されているとは言い難い. 嚥下障害の原因としては脳卒中などによる機能的なものと, 腫瘍などによる構造的なものがあるが, 高齢者では単一の原因を特定できないことも多い.
治療には薬物, リハビリテーション, 手術がある. 薬物治療としては誤嚥性肺炎に対してACE阻害剤やアマンタジンが注目されている. 嚥下を阻害する薬剤の投与による医原性の嚥下障害にも注意しなければならない. リハビリテーションは嚥下障害に対してたいへん効果がある. 急性期の廃用症候群予防に始まり, 全身状態が落ち着いたら的確な評価の元に積極的な介入をするなど適切なリハビリテーションを行うべきである. 重症嚥下障害に対しては手術も重要な選択肢である.

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