日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
37 巻, 9 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 藤島 一郎
    2000 年 37 巻 9 号 p. 661-665
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    嚥下障害は古典的な口腔期, 咽頭期, 食道期の3期分類から概念を広げ食品の認知や取り込み, 咀嚼食塊形成などを含む, 広い捉え方をされるようになっている. 嚥下障害で問題となるのは誤嚥と栄養障害, 食べる楽しみの喪失である. 従来, 医療の現場では安全性を優先する立場が強く, 誤嚥性肺炎の危険がある場合には経管栄養を優先する対応がとられてきた. しかし, 嚥下障害を十分理解し検討した上で対応されているとは言い難い. 嚥下障害の原因としては脳卒中などによる機能的なものと, 腫瘍などによる構造的なものがあるが, 高齢者では単一の原因を特定できないことも多い.
    治療には薬物, リハビリテーション, 手術がある. 薬物治療としては誤嚥性肺炎に対してACE阻害剤やアマンタジンが注目されている. 嚥下を阻害する薬剤の投与による医原性の嚥下障害にも注意しなければならない. リハビリテーションは嚥下障害に対してたいへん効果がある. 急性期の廃用症候群予防に始まり, 全身状態が落ち着いたら的確な評価の元に積極的な介入をするなど適切なリハビリテーションを行うべきである. 重症嚥下障害に対しては手術も重要な選択肢である.
  • 安藤 譲二
    2000 年 37 巻 9 号 p. 666-675
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血管壁には常時, 血流に基づくシェアストレスや血圧による伸展張力などのメカニカルストレスが作用している. 血管壁の内皮細胞や平滑筋細胞はメカニカルストレスの変化を敏感に察知し細胞応答を起こす. 細胞の形態や機能が変化し, その際に, 関連する遺伝子の発現も変化する. こうした細胞応答は血管の新生や成長や再構築だけでなく, 組織の血液循環や体血圧の調節, さらには血液凝固・線溶現象や組織の免疫・炎症反応にも深く関わっている. 概して生理的なメカニカルストレスは血管拡張, 抗血栓, 抗粥状動脈硬化, 抗平滑筋増殖の方向に働くが, その強さや性質が過度に変化すると病因として働くことがある. 例えば, 適当な強さの層流性のシェアストレスが弱く乱流性になると粥状動脈硬化病変が起き易くなる条件が出来上がる. 近年, 培養血管細胞に流体力学的に設計された装置で定量的なメカニカルストレスを負荷する実験法が応用されて, その細胞作用が次第に明らかになってきた. シェアストレスが内皮細胞の血管拡張物質の産生を促し, 逆に血管収縮物質産生を抑制すること, トロンボモデュリンの発現を増加させて抗血栓活性を高めること, 接着分子の発現を修飾して白血球に対する接着性を変えること, あるいは増殖因子やサイトカインを放出することが判明した. また, シェアストレスが内皮遺伝子の発現を転写あるいは転写後レベルで調節すること, 転写調節ではシェアストレスで活性化される転写因子とそれが結合する遺伝子プロモーターのシェアストレス応答配列が重要な役割を果たしていることも明らかになった. シェアストレスの情報伝達に関してはまだ特異的なセンサー分子は発見されていないが, Ca2+, K+チャネル, G蛋白, 各種プロテインカイネース, インテグリンなど多くの因子が関与することが指摘されている. 現在, シェアストレスに特異的な情報伝達経路の解明が進行中である.
  • 佐々木 英忠
    2000 年 37 巻 9 号 p. 676-679
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 井原 康夫
    2000 年 37 巻 9 号 p. 680-686
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 今堀 和友
    2000 年 37 巻 9 号 p. 687-692
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 久道 茂
    2000 年 37 巻 9 号 p. 693-698
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 山崎 摩耶
    2000 年 37 巻 9 号 p. 699-704
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 日和田 邦男
    2000 年 37 巻 9 号 p. 705-708
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 今村 雅寛
    2000 年 37 巻 9 号 p. 709-711
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 正毅
    2000 年 37 巻 9 号 p. 712-715
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 井口 昭久, 野口 美和子
    2000 年 37 巻 9 号 p. 716
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 袖井 孝子
    2000 年 37 巻 9 号 p. 717-718
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 倫理委員会案
    植村 和正
    2000 年 37 巻 9 号 p. 719-721
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 栄養に関して
    村井 淳志
    2000 年 37 巻 9 号 p. 722-724
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 横内 正利
    2000 年 37 巻 9 号 p. 725-727
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 荒畑 和美, 内山 覚, 藤田 博暁, 小山内 隆, 成田 寿次, 国分 江美佳, 中原 賢一, 松下 哲, 西永 正典
    2000 年 37 巻 9 号 p. 728-733
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    東京都老人医療センター総合内科病棟では, 医師, 看護婦, 理学療法士, 薬剤師等がチームとなり, 高齢心不全患者に対し包括的評価をもとにした多職種による介入を行っている. 今回, 高齢心不全患者 (12例, 平均年齢79±9歳, 基礎疾患は弁膜症5例, 拡張型心筋症4例, 虚血性心疾患3例) に対して運動療法を試み, 心不全への影響と筋力およびADLに対する効果について検討した.
    訓練開始前と終了時の心機能指標の比較では, 胸部X線写真での心胸比63.8±7.9/60.1±6.9%, 心臓超音波検査法での左室駆出率47.4±18.2/56.0±17.5%, 心房性利尿ペプチドホルモン143.6±110.7/106.5±70.9pg/ml (n.s.), 脳性利尿ペプチドホルモン404.8±267.5/313.6±239.5pg/ml (p<0.05) と不変もしくは改善を認めた.
    一方, 膝伸展筋力は開始時0.77±0.36Nm/kgに対し, 終了時0.97±0.41Nm/kg (p<0.01), 歩行距離は, 開始時149±164mに対し終了時456±394mと有意に増加した (p<0.05). 息切れや下肢疲労感が軽減したことにより生活活動範囲は格段に拡がり, 日常基本動作では排泄や入浴が改善した.
    高齢心不全患者に対する運動療法は, 患者本人のQOL改善に寄与できるだけでなく, 要介護量の減少による家族の負担の軽減という形でも貢献できる. 高齢心不全患者への運動療法は有用で, 心不全への包括的医療の重要な要素の一つである.
  • 内藤 通孝, 野村 秀樹, 井口 昭久
    2000 年 37 巻 9 号 p. 734-738
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    学生向け老年医学教科書の問題点を明らかにするために, 医学教科書に対する医学生の意識を調査した. 老年医学を含む臨床系統講義の受講を終了し, 老年科臨床実習に参加した医学部5年生 (1998年度98名, 1999年度95名) に対し, 老年医学の教科書に対する意識についての調査を無記名アンケート方式で行った. 内科学の教科書をもっている者は両年度とも100%, 診断学の教科書をもっている者は98年度51.0%, 99年度42.1%であったのに対し, 老年医学の教科書をもっている者は98年度5.1%, 99年度2.1%であった. 老年医学の教科書をもっていない理由は,「どの教科書がよいかわからないから」が98年度61.2%, 99年度56.8%;「必要がないから」が98年度13.3%, 99年度18.2%;「適当な教科書がないから」が98年度4.1%, 99年度4.2%;「その他」の理由が98年度16.3%, 99年度18.9%であった. 教科書を選ぶ基準で最も重視するのは,「自分で実際に見て決める」が98年度39.8%, 99年度55.8%;「先輩・友人からの情報」が98年度41.8%,99年度35.8%;「教官の推薦」が98年度14.3%, 98年度5.3%であった. 老年医学の教科書は内科学や診断学の教科書に比べると, 自分で所持している医学生の割合は極めて低かった. しかし, 所持していない理由は必要がないからではなく, どの教科書がよいかわからないからという者が最も多かった. また, 教科書を選ぶ基準としては, 教官の推薦よりも自分自身の判断や先輩, 友人からの情報を重視する姿勢が伺われた. これらの結果から, 学生向けに期待される老年医学教科書の条件として, 1) 内科学との相違を強調した老年医学および老年学の独自性, 2) 難し過ぎない学生向きの内容, 3) 持ち運びしやすい大きさと重さ, 4) 手頃な値段, などが考えられた. また, 老年医学の独自性を強調した講義を行うことが重要と考えられた.
  • 古田 昭, 鈴木 正泰, 滝沢 明利, 田代 和也, 大石 幸彦
    2000 年 37 巻 9 号 p. 739-743
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    排尿記録表より得られたデータを基にして Quality of Life (QOL) を低下させる排尿状態を分析し, その治療法について検討した. 3年以上継続的受診していて排尿に関する基礎疾患を持たない50歳以上の高血圧治療患者 (カルシウム拮抗薬内服者) 52例と正常血圧患者28例 (平均68.6歳, 50~85歳) を対象として, 2日間の排尿記録と現在の排尿に関するQOLスコアについて調査した. その結果, 就寝時尿量と排尿回数, 就寝時尿量比 (1日尿量に対する就寝時尿量の割合) の増加がQOLを低下させる要因であることが明かになった. 対照群はカルシウム拮抗薬内服群より就寝時尿量と排尿回数, 就寝時尿量比が有意に増加しており (それぞれp<0.05), 特に70歳以上において就寝時排尿回数と就寝時尿量比の有意な増加を認めた (それぞれp<0.01, p<0.05). 以上より, 血圧コントロールを目的としたカルシウム拮抗薬の投与が高齢者の夜間多尿を減少させる可能性が示唆された.
  • 沖縄県伊江村と愛媛県面河村
    藤澤 道子, 松林 公蔵, 和田 知子, 奥宮 清人, 土居 義典, 下方 浩史
    2000 年 37 巻 9 号 p. 744-748
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    従来, 日本人には高血圧が多かったが, 沖縄県は高血圧の頻度が少ないと言われてきた. しかし, 沖縄県が日本に返還され, 20年以上経た現在においても同様のことが言えるのかを明らかにするため, 沖縄県の一離島である伊江村とその対照として愛媛県面河村在住の高齢者の血圧について比較検討した.
    対象は, 両地域在住の75歳以上の高齢者で, 6カ月以上の施設入所者, 長期入院者は除いた. 家庭訪問により自動血圧計を用いて座位で血圧を2回測定し, その平均値を採用した. また, 同時に降圧薬の服用の有無を問診した. 厚生省長寿科学総合研究研究班が提唱している老年者の高血圧治療ガイドラインー1999年改訂版一が勧める, 70歳以上の高齢者の血圧治療の対象血圧である収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の両方またはどちらか一方をみたすものと降圧薬を服用しているものを血圧高値者と定義し, 収縮期血圧160mmHg未満, 拡張期血圧90mmHg未満の両方をみたしかつ降圧薬を服用していないものを血圧非高値者とした.
    両地域で比較すると, 血圧高値者の割合は, 伊江村で48.5%, 面河村で56.6%と有意差を認めなかった. しかし, 血圧高値者で降圧薬を服用している者の割合は伊江村54%, 面河村74%と面河村のほうが有意に高かった. 降圧薬を服用している者の適正値以下への治療効果については両地域で有意な差を認めなかった. 沖縄県の一村と愛媛県の一村のみの検討であり一概に論じこめるには慎重でなければならないが, 沖縄県の血圧高値者の割合は以前に考えられていたよりも増加している可能性がある. また, それにもかかわらず, 沖縄県では健康問題における血圧の比重が軽く認識されている可能性がある.
  • 濱田 泰伸, 河野 修興, 横山 彰仁, 近藤 圭一, 日和田 邦男
    2000 年 37 巻 9 号 p. 749-753
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性. 肺炎のため入院し, 抗生物質の投与にて発熱およびCRPはやや改善したが, 画像上の陰影悪化を認めた. 胸部単純X線写真上, 右上, 中肺野に浸潤影を, 胸部CTでは浸潤影およびスリガラス陰影を認めた. 気管支肺胞洗浄液 (Bronchoalveolar lavage fluid: BALF) で総細胞数およびリンパ球の増加を認め, 経気管支肺生検組織では多核巨細胞を伴う肉芽腫を認めた. BALFのPCR法を用いた遺伝子診断法および培養の結果より Mycobacterium intracellulare が陽性であり, Mycobacterium avium complex (MAC) 症と診断した. クラリスロマイシンおよび抗結核薬の投与を開始したが, 著しい食欲低下を認めたため抗結核薬の投与を中止し, クラリスロマイシン単独で加療を行った. クラリスロマイシン投与開始約2週間後, 発熱は全く認めなくなり, 3カ月後には画像上も著しい改善を認めCRPも陰性化した. 全身状態も改善し, 抗結核薬の併用化学療法も可能となった. MAC症は高齢者に多く, 高齢者人口の増加とともに今後増加する可能性がある. 本症の進行は呼吸機能や全身状態の悪化をきたす原因となるため, 本症を疑う場合には気管支鏡検査などにより早期診断を得ることが重要である. その治療に際してはクラリスロマイシンや抗結核薬などの薬剤を含め, 個々の患者の全身状態に見合った治療を行うべきである.
  • 山本 さやか, 梅垣 宏行, 鈴木 裕介, 神田 茂, 中村 了, 岩田 充永, 葛谷 雅文, 青木 重孝, 井口 昭久
    2000 年 37 巻 9 号 p. 754-755
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2009/11/24
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