東京都老人医療センター総合内科病棟では, 医師, 看護婦, 理学療法士, 薬剤師等がチームとなり, 高齢心不全患者に対し包括的評価をもとにした多職種による介入を行っている. 今回, 高齢心不全患者 (12例, 平均年齢79±9歳, 基礎疾患は弁膜症5例, 拡張型心筋症4例, 虚血性心疾患3例) に対して運動療法を試み, 心不全への影響と筋力およびADLに対する効果について検討した.
訓練開始前と終了時の心機能指標の比較では, 胸部X線写真での心胸比63.8±7.9/60.1±6.9%, 心臓超音波検査法での左室駆出率47.4±18.2/56.0±17.5%, 心房性利尿ペプチドホルモン143.6±110.7/106.5±70.9pg/m
l (n.s.), 脳性利尿ペプチドホルモン404.8±267.5/313.6±239.5pg/m
l (p<0.05) と不変もしくは改善を認めた.
一方, 膝伸展筋力は開始時0.77±0.36Nm/kgに対し, 終了時0.97±0.41Nm/kg (p<0.01), 歩行距離は, 開始時149±164mに対し終了時456±394mと有意に増加した (p<0.05). 息切れや下肢疲労感が軽減したことにより生活活動範囲は格段に拡がり, 日常基本動作では排泄や入浴が改善した.
高齢心不全患者に対する運動療法は, 患者本人のQOL改善に寄与できるだけでなく, 要介護量の減少による家族の負担の軽減という形でも貢献できる. 高齢心不全患者への運動療法は有用で, 心不全への包括的医療の重要な要素の一つである.
抄録全体を表示