日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
視床性手口感覚症候群の臨床的検討
鴨川 賢二冨永 佳代岡本 憲省奥田 文悟
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2006 年 43 巻 1 号 p. 126-131

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抄録

今回我々は短期間に6例の手口感覚症候群を経験したのでその臨床像と責任病巣について検討した. 年齢は56~90歳で, 男性4例, 女性2例であった. 発症から受診までの時間は当日受診が3例, 翌日2例, 5日目1例であった. 感覚障害の分布は全例とも手口型で, 自覚的感覚障害は全例でみられ, 他覚的感覚障害は4例でみられた. 自覚的しびれの身体部位は表在覚低下部位よりも広い傾向があった. 随伴症状は3例でみられ, 失調性不全片麻痺, 不全片麻痺, 巧緻運動障害, 構音障害であった. 全例とも視床近傍の梗塞 (5例はラクナ梗塞, 1例は branch atheromatous disease) により発症し, 責任病巣は後腹側核群 (4例), 視床枕・内側膝状体近傍 (1例), 視床後腹側部・内包後脚・放線冠 (1例) であった. 3例で無症候性脳梗塞がみられた. 危険因子は高脂血症, 高血圧, 糖尿病, 頸動脈硬化, 喫煙, 多血症であった. 予後は1例でのみ自覚的感覚障害が消失したが, 残りの5例では感覚障害や麻痺が残存した. 手口感覚症候群は主として視床の後腹側核群の病変により生じるが, 上行性感覚線維の障害によっても発症することが示唆された. 初発症状は軽症であるが, 運動障害を合併する例もあるため早期の診断, 治療が必要である.

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