2010 年 9 巻 2 号 p. 159-164
ファイトトロンを用いて,満開後約2か月間を旬ごとに平均気温に設定した対照区と,常に対照区より2℃高く推移させた+2℃区を設定し,2℃の平均気温上昇がカンキツの生理落果に及ぼす影響を調査した.‘興津早生’,‘石地’,‘白川’ウンシュウミカンおよび‘不知火’では,満開10~20日後頃から落果率は+2℃区が対照区よりも高い値で推移した.‘興津早生’,‘石地’では最終落果率も+2℃区が対照区よりも5%程度高かった.摘果により着果数を制限した‘宮川早生’,‘させぼ温州’では,無摘果(花)の他の品種と同様に,満開10~20日後頃から落果率は+2℃区が対照区よりも高い値で推移した.特に‘させぼ温州’においては,+2℃区と対照区の間の最終落果率の差(26%)が,‘宮川早生’よりも大きくなった.果実横径は‘宮川早生’,‘させぼ温州’とも,+2℃区で大きく推移した.従って,満開期以降の2℃の気温上昇は,果実肥大を促進しながら,生理落果を多くする傾向があると考えられた.