抄録
症例は34歳男性.嗄声,胸痛を主訴に受診.右胸腔に突出する10×15cmの腫瘤を認め,AFP,β-HCG高値より,非セミノーマ性縦隔胚細胞腫と診断.シスプラチン,エトポシドを含む放射線同時併用化学療法を2クール施行した.腫瘍マーカーは正常化したが,腫瘍はさらに増大した.初診から2ヵ月後に手術を施行した.術後の病理診断は体細胞型腫瘍成分を有する胚細胞腫瘍(以下GCTSTM)であった.術後37日後に再発,その後肺炎を合併し術後57日目に永眠された.GCTSTMは通常使用される化学療法のレジメンでは効果を得にくく,予後は非常に不良である.腫瘍マーカーが正常化しても腫瘍が増大傾向を示す場合,体細胞型腫瘍成分の存在の可能性を念頭に置く必要がある.