2009 年 62 巻 2 号 p. 121-126
Pagetoid spread(以下PS)をともなう直腸肛門管癌は稀な疾患である.今回,排便時肛門痛を主訴として来院した65歳の女性で,歯状線近傍の肛門管内に二峰性の隆起性病変を認め,経肛門的に切除したが断端陽性のため腹会陰式直腸切断術施行した症例を経験した.病理学的検査と免疫組織学検査でPSをともなった肛門腺由来の肛門管原発腺癌と診断した.術後経過は良好であった.PSをともなう直腸肛門管癌は稀で本邦報告は62例でその内,肛門腺由来症例は19例.進行癌が多く本症例は肛門腺由来の上皮内癌(carcinoma in situ)で切片標本上でPSの進展機序を証明された本邦初例であった.「PSの始まりは肛門腺の上皮内癌」であるとの可能性が強く示唆された.