2010 年 63 巻 2 号 p. 43-50
大腸癌根治切除例のうち,粘液癌を分化型腺癌と比較し臨床病理学検討を行うとともに,粘液癌を組織学的特徴により2群に分類し,臨床病理学的な検討と予後因子の検討を行った.粘液癌の発生頻度は5.1%で,高·中分化型腺癌と比較して,右側の発症率,腫瘍径の大きい症例,深達度T3以深の症例が有意に多かった.粘液癌の5年生存率は68.8%と高·中分化型腺癌と比較し有意に低かった.粘液癌の予後因子の検討では,由来組織,リンパ管侵襲,リンパ節転移が予後規定因子として有意差をもって選択され,因子の数が多い症例ほど5年生存率は有意に低かった.また,粘液癌をその由来組織により高分化型と低分化型に分類し検討すると,低分化型では5年生存率が40%と有意に低かった.粘液癌の中でもこれらの予後不良因子を有する症例の場合には高リスク大腸粘液癌として,高·中分化型腺癌とは異なる治療方針を考慮する必要性があると考えられた.