抄録
びまん浸潤型大腸癌における癌の腸管浸潤範囲に応じた診断, 治療上の特徴や問題点を明らかにするため, 自験4例を含む本邦報告239例を対象に, 腸管浸潤の長さが10cm未満, 10~20cm, 20cm以上の3群につき, その割合や臨床病理学的因子, 術前正診率, 治療成績を比較検討した.その結果, 10cm未満の例が約半数を占め, 20cm以上の例は13%に過ぎない.癌の腸管浸潤範囲が長くなるにつれて, 1) 左側結腸を占居する低分化型腺癌が有意に増加する.2) 術前正診率は向上するが依然50%程度であり, 生検で癌と証明される率が低下する.それに伴って炎症性腸疾患と診断される率が増加する.3) 根治切除率が有意に低下し, 20cm以上での根治切除率は10%に過ぎない.そして根治切除が行われても予後はきわめて不良である等が明らかになった.今後, 腸管浸潤範囲を考慮したびまん浸潤型大腸癌の分子生物学的性状の解析と治療法の確立が望まれた.