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論文
炭酸塩水溶液環境における炭素鋼の自己不働態化
深谷 祐一明石 正恒
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2007 年 56 巻 11 号 p. 521-528

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抄録

0.1 mol dm−3の炭酸塩水溶液系における炭素鋼SM400Bの自己不働態化挙動を検討した.298 Kでの炭素鋼の不働態化臨界電流密度icritは,炭酸塩の作用により,pH=7.5~10.0の範囲で1桁程度減少した.減少したicritに対応する不働態化臨界電位は,FeCO3が熱力学的に安定な電位-pH領域にほぼ含まれた.これらのことから,炭酸塩は不働態化傾向を促進することが示された.298 Kの炭酸塩水溶液中での脱不働態化pHは,icritと溶存酸素8.14 ppmの場合の溶存酸素拡散限界電流密度との比較から7.5と決定された.この値は,炭酸塩を含まない水溶液中での9.3に比べて顕著に低い.363 Kでは298 Kに比べて不働態化傾向が促進された.大気に平衡した298 Kの炭酸塩水溶液中での自然腐食電位Ecorrは,浸漬初期は活性溶解電位域にとどまるものの,pH≥8.0の範囲では,長期間経過後に急激に不働態電位域へ貴化した.この自然腐食電位の経時的な変化は,電気化学反応速度論の立場から説明された.

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© 2007 公益社団法人 腐食防食学会
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