家政学雑誌
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長野県大鹿村の食生活の現状の実態調査
食生活と食塩との関連
木村 友子中野 典子加賀谷 みえ子森奥 登志江福谷 洋子小川 安子
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1984 年 35 巻 8 号 p. 573-585

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抄録

大鹿村の358世帯を対象に, 食生活と食塩との関連を調べる目的でアンケート調査を行い, あわせて自家製の漬物類・味噌・煮豆および1日分の食事を購入して, 食塩濃度・糖度などの実測とを行い, 次の結果を得た.
1) 食生活状況においては, 朝食・昼食・夕食の喫食率は約98%以上できわめて高く, 朝食・夕食を家族そろって食べている家庭が非常に多い.また献立内容も全世帯中約95%の世帯の家族が同じ献立で食べていた.
2) 食事作成上の関心度は, 栄養のバランス>好み>季節性>食事のしたくが簡単>安全性>経済性>その他の順位で関心があり, また季節性において世代別間に有意性が認められた.
3) 調査した1週化を通しての食事形態は, 米飯中心に主食をとっていることがわかった.このことは9名の主婦の1日分の食事の実測調査でも, パン食はみられず, 同じ結果を得た.
4) 1週間における食品の摂取頻度について, 5日間以上食べている食品群は漬物, 緑黄色野菜, 白色野菜, 豆類および加工品が高率で, 土地の産物利用が目立つのに対し, 肉類および加工品, 魚介類および加工品, 海草類, いも類ではやや低率であった.また肉類および加工品と豆類および加工品において, 世代劉間と摂取頻度数に有意性が認められた.
5) 漬物類 (提供者20世帯) の食塩含有量の実測では, 比較的高いものが多く, また喫食頻度も全世帯で1日平均3回以上食されていた.
6) 調査した15世帯の自家醸造味噌の食塩含有量平均値は11.80%であり, 従来の自家醸造味噌の食塩含有量の15%前後に比すれば, 低塩になりつつあるように思われた.
7) 自家製大豆煮豆の糖度・食塩濃度・硬さの測定結果は, 糖度では甘味が強く, 食塩濃度はひかえめで, 硬さは市販品より硬めで喫食されていた.自家製いんげん豆の煮豆は市販品より糖度が低く, 硬さは市販品と類似であった.参考試料としての市販品の煮豆5品のなかには品質・保存性など向上の目的で添加物使用標示されているものが3品あったため, 自家加工を推奨したい.
8) 食物摂取量の実測 (主婦9名の主食・副食・間食を含む1日分の食事) において内容を検討した結果, 栄養素の摂取状態は比較的バランスがよい.調理の方法としては日本料理が圧倒的に多かった.また食品群においてはとくに野菜類 (漬物) ・豆類および加工品の摂取量が高く, 1日分の食塩摂取状況を調査した結果は, 1日1人あたり平均15.289であり, 主に味噌・漬物類などからの食塩摂取が多いので, 1日約10gまでに是正したい.
以上, 大鹿村住民の食生活の実態において, 食品からの食塩過剰摂取が健康に悪影響を及ぼすという認識度は高く, 漬物・味噌などの加工食品を作成する場合に, 比較的注意を払う傾向にある反面, 実際に食事の食塩量を実測した結果は, やや過剰ぎみであった.このことは食生活において, 食品の摂取量や塩分に対する味覚面・嗜好面に何らかの問題点があると思われた.要するにこのような地域では, 従来からの日本食パターンが, いまだ根強く残っていると思われるので, 今後, 食生活の近代化・合理化とともに, 日本食のよい点を残し, 適正な食事改善が望まれる.

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