2008 年 111 巻 3 号 p. 91-95
声門閉鎖不全疾患に対する声帯内注入術に自家脂肪が用いられるようになってきた. 従来, 用いられる脂肪組織は, 主に下腹部より採取されてきた. しかし, 下腹部の脂肪組織量は個人差が大きく, 十分量の脂肪組織の採取が困難なことがある. そこで, 形成外科で用いられる頬部脂肪体 (Buccal Fat Pad) を用いる方法を試みたので, その方法および術後の経過を報告した.
2005年1月から2005年12月までの一年間に, 頬部脂肪体を用いた声帯内脂肪注入術を施行し, 術後6カ月以上経過観察することができた10例を対象とした.
1例を除いて, 術後, 脂肪採取部位や声帯に腫脹, 感染などの合併症を認めなかった. 注入後の音声は著明に改善し, 観察期間中持続した.
頬部脂肪体を利用した声帯内自家脂肪注入術を行い, その有用性を確認した.