頸動脈小体腫瘍は, 頸動脈分岐部に発生する比較的まれな腫瘍であり, 手術においては出血のコントロールおよび術後神経障害が問題となる. それゆえ, 術前の栄養血管塞栓術が有用と報告されている. 今回, 頸動脈小体腫瘍手術症例において, 術前栄養血管塞栓術の有効性および術後合併症の検討を行ったので報告する.
1990年から2005年までに, 当科にて頸動脈小体腫瘍と診断され手術を施行した6例7側を対象とした. 術前診断としてCT, MRI, 超音波検査, 血管造影検査を行った. 4例5側に術前栄養血管塞栓術を施行した.
栄養血管塞栓術施行4例5側では, 術中出血量が平均291mlで, 手術時間が平均4時間55分であった. 非施行2例では, 術中出血量が平均1016mlで, 手術時間が平均10時間17分であった. 脳神経障害を認めた例は一過性も含めると, 舌咽神経麻痺1例, 迷走神経麻痺2例, 舌下神経麻痺4例5側であった. 栄養血管塞栓術施行例では, 術後脳神経障害が出現しても一過性であり, 短期間で改善する傾向がみられた. 両側切除例においてbaroreflex failure syndromeを認めた.
栄養血管塞栓術施行例では, 非施行例と比較して術中出血量が少なくなり, 手術時間が短縮する傾向が見られた. また, 術後脳神経障害の程度が軽度であった.
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