日本耳鼻咽喉科学会会報
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新生児用自動ABR (natus-ALGOR2e)によるNICU児聴覚スクリーニング
栢野 香里鈴木 治子中野 宏林戸 功木村 隆保立本 圭吾西山 彰子福島 龍之
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2000 年 103 巻 8 号 p. 885-893

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抄録

(目的)新生児用自動ABR, natus-ALGOR2e(以下ALGOとする)は,35dBクリック音で発生するABR V波を正常モデル波形とパターンマッチングで比較し,正常/PASSか,異常/REFERかを判定する装置である.新生児用スクリーニングとして用いたときの有用性について,従来のABRと比較検討した.
(対象と方法)対象は当院NICUに入院した新生児101例202耳で,平均在胎週数34.4±4.3週,平均出生体重2027.7±785.1g,検査時平均日齢42.0±33.9日,平均修正週数40.4±3.0週であった.REFER症例を含む難聴のハイリスク児30例60耳には,従来のABR (NEC SYNAX 2100)も施行し比較した.
(結果) (1) ALGOは全例,自然睡眠下に施行でき,両側PASSが97例,両側REFERが3例,片側REFERが1例であった.平均測定時間は2分58秒と短時間に行えた.
(2) 難聴のハイリスク児30例60耳におけるABRとの比較では,ALGOでPASSと判定された53耳のうち,14耳でABRの異常を認めた.この不一致例9例(14耳)のリスク因子としては,低出生体重児が多く,仮死や呼吸障害を多く認めた.5週~12ヵ月後のABR再検では,11耳は正常となり,他の3耳は異常ながら,閾値や潜時の改善傾向を認めた.
(3) ALGO PASS症例での掃引回数(SWP)に注目すると,ABR正常例より異常例の方が掃引回数が多く,t検定で有意差を認めた.
(4) ALGO REFER 4例(7耳)は全例,ABRも異常であったが,このうち3耳は12週~11ヵ月後の再検時,ABRは正常化した.このうち1耳はALGOもPASSとなった.
(考察) ALGOは自然睡眠下に短時間で測定でき,スクリーニングに有用と思われた.難聴のバーイリスク児中,ALGOの掃引回数が多い例で従来のABRと結果の不一致を認めた.このためALGOがPASSであっても,掃引回数が多い場合,従来のABR施行を含め,数回の再検を行うことが望ましいと思われる.

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