日本耳鼻咽喉科学会会報
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保育施設園児における鼻咽腔インフルエンザ菌と肺炎球菌の検討
橋田 光一塩盛 輝夫寳地 信介北村 拓朗宇高 毅鈴木 秀明
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2006 年 109 巻 12 号 p. 821-829

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抄録

近年乳幼児における難治性,反復性中耳炎の増加が問題となっており,その要因として薬剤耐性菌の増加,集団保育などが指摘されている.今回我々は夏期•冬期に2集団保育施設園児を対象に,耳鼻咽喉科疾患既往•罹患状況,インフルエンザ菌,肺炎球菌の鼻咽腔検出率,薬剤感受性を検討した.既往歴は中耳炎が最多で,検診結果では鼻•副鼻腔炎が最多であった.インフルエンザ菌検出率は冬期に上昇し,耐性菌比率は冬期に減少した.肺炎球菌検出率は,夏期•冬期ともに40%台で,耐性菌比率は冬期に減少した.耐性菌比率を保育園別にみるとインフルエンザ菌21.6~69.7%,肺炎球菌5.1~48.9%とばらつきがあった.鼻咽腔における保菌の有無,母乳栄養の有無で各疾患の既往に有意差は認められなかったが,冬期の診察所見で,保菌ありの群の鼻•副鼻腔炎の有所見率が有意に高かった.通園期間と保菌率との関係は通園期間3ヵ月以内での保菌率は50.0%で,12ヵ月以降では75~80%であり,ほぼ一定であった.
以上より,乳幼児は集団保育施設に入園後,速やかにインフルエンザ菌,肺炎球菌の暴露を受け,入園中は菌の定着が維持されるが,耐性菌比率は時期,対象施設によって大きく異なっていた.今後さらに集団保育児の上気道からの細菌サーベイランスを行い,これらの菌の保菌状態,流行性,耐性率を評価する必要があると考えられた.

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