日本応用動物昆虫学会誌
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コカクモンハマキの栄養と代謝に関する研究
II. 羽化因子について
玉木 佳男
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1961 年 5 巻 1 号 p. 58-63

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抄録
前報において合成飼料によるコカクモンハマキの無菌飼育法について述べ,更に飼料中の茶葉粉末が幼虫の生育を促進する効果をもつとともに,成虫の羽化に必須な因子を含んでいることを推定した。本報ではこの羽化因子を明らかにするため行なった一連の実験結果を報告する。
飼料中に茶葉粉末を欠くと幼虫の生育は著るしく劣り,大部分が幼虫末期に死亡して蛹になるものはほとんどない。茶葉粉末含量が増加するにしたがって幼虫の生育は良好になり,また正常成虫の発現率は上昇する。その最適含量は幼虫の生育,正常成虫の羽化のいずれに関しても,飼料乾物中の22.4%以上である。
茶葉粉末の各分画での飼育試験の結果,幼虫の生育促進因子は熱水で抽出されるがエーテルには全く溶解せず,一方成虫の羽化因子は熱水には溶解しないがエーテルではかなり抽出されることが判明した。すなわち,これら二種の因子には化学的性質を異にする別々の物質が関与していると考えられる。
成虫の羽化因子として脂肪および脂肪酸の効果を検討した結果,茶葉粉末は羽化効果に関するかぎり飼料乾物中0.7∼2.8%のアマニ油で完全に代用でき,更にアマニ油は0.14∼0.56%のリノレン酸で置き換えうることが判明した。一方オリーブ油,ステアリン酸,オレイン酸,およびリノール酸は効果をもたなかった。
以上の結果から,コカクモンハマキはその成虫の羽化のために,飼料中に不飽和脂肪酸の一種,リノレン酸を要求すると結論できる。
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