抄録
症例は44歳の男性で,アメーバ性大腸炎,肝膿瘍の既往あり.左下腹部痛,血便が出現したが放置.2か月後,腹痛が増悪し,近医を受診した.画像検査所見上,腹腔内遊離ガス像,下部内視鏡検査にてS状結腸までにタコイボ状の多発性潰瘍を認めた.Human Immunodeficiency Virus(以下,HIV)抗体陽性であり,当院に転院した.アメーバ性大腸炎穿孔による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.S状結腸に穿孔を認め,Hartmann手術を施行した.術後の検査でアメーバ原虫が認められ,メトロニダゾールの内服を開始した.2週間後に人工肛門が脱落し,再手術を施行した.全大腸が浮腫状かつ脆弱で,全層性の腸管壊死が疑われ,大腸亜全摘,回腸瘻造設術を施行することで救命しえた.劇症型アメーバ性大腸炎の死亡率は極めて高い.早期診断,抗アメーバ剤投与,症例に適した術式を選択することが救命へとつながる.