抄録
はじめに:当院で経験した,冠動脈疾患に対して薬剤溶出性ステント(DES)留置後に外科切除を行った消化管悪性腫瘍症例につき検討を行った. 方法:2007~2009年までの2年5か月間に当院にてDES留置後に消化管悪性腫瘍に対して外科手術を施行した15例を対象とした.術前状態および周術期管理,術後合併症の発生状況と転帰につき検討した. 結果:疾患の内訳は胃癌が9例,結腸癌が3例,直腸癌が3例であり,施行術式は幽門側胃切除6例,胃全摘+脾摘1例,胃全摘2例,結腸切除(腹腔鏡下手術含む)3例,直腸低位前方切除(腹腔鏡下手術含む)3例であった.DES留置後より外科切除までの期間は中央値17か月であり,特に直近の10症例のうち4例がDES留置後12か月以内の外科切除を余儀なくされた.チエノピリジン系剤投与は術前1週間前に中止しヘパリン投与に切り替え,手術前日までのアスピリン内服継続による周術期管理を原則とした.術中術後を通してステント血栓症や重篤な出血性合併症は認めず,安全に外科切除を完遂しえた. 考察:DES留置後においても,厳密な周術期の投薬管理により消化管悪性腫瘍への外科切除は安全に行いうることが示された.今後はさらに症例の増加が予想され,DES留置前の消化器癌を含めた悪性腫瘍スクリーニングの重要性を強調するとともに,周術期の投薬管理のプロトコール確立が重要と考えられた.