日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
食道癌術後に第VIII凝固因子インヒビターによる後天性血友病を発症した1例
川崎 健太郎大澤 正人小林 巌中山 俊二金治 新悟仁和 浩貴大野 伯和藤野 泰宏富永 正寛中村 毅
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2010 年 43 巻 9 号 p. 893-899

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抄録

 症例は55歳の男性で,食道癌に左開胸開腹下部食道噴門側胃切除(well diff. adenocarcinoma, Ae, 10 mm, T1aMM, n0, M0, stage 0)を施行した.周術期に出血傾向はなかった.術後53日目(53 POD)右股関節が腫脹,その後右背部も腫脹してきたため64 P0D当院を受診した.Hb 7.5 g/dlと貧血を認め緊急入院となった.CTで右腸腰筋から右股関節,背部の筋肉内に広範な出血を認めた.PTが軽度,APTTが高度に延長していた.輸血,FFPで経過を観察したが出血は持続,71 POD血管造影にて塞栓術を行った.しかし,貧血は進行,第VIII凝固因子活性が1%以下と判明したため全身疾患を疑い転院となった.精査の結果,第VIII凝固因子インヒビターによる後天性血友病であり,第VII凝固因子製剤によるBy-pass療法とステロイドで軽快した.消化器癌術後の凝固因子インヒビターによる出血はまれな疾患であるが,重篤な結果を招くこともあり,本疾患に対する認識と迅速な対応が必要であると思われた.

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