症例は31歳の女性で,腹痛,嘔吐,下痢を主訴に当院受診し,入院2日目に施行した造影CTで小腸イレウスと診断し,骨盤腔内子宮後側に口径変化のある小腸を認めた.同日イレウス管を留置して減圧治療を開始し,症状の一時的改善を認めたが,入院6日目に腹痛の増強を認めた.CTを再検し,腹腔内遊離ガスと腹水を認め,穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹所見で,直腸子宮窩腹膜に径1.5cmの異常な開口部があり,そこに回腸末端近くの回腸が嵌頓していた.嵌頓部から約20cm口側の小腸に小孔を2か所認めた.嵌頓腸管を解除し直腸子宮窩腹膜の異常開口部を縫合閉鎖した.嵌頓腸管は壊死していなかったので温存し,腸管穿孔部は縫合閉鎖した.自験例の直腸子宮窩の腹膜異常裂隙は先天性発生と思われた.報告例は少ないが,画像検査で直腸子宮窩に腸閉塞の閉塞機転を認めた場合,本疾患も鑑別診断として考慮する必要があると考えられた.