日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
直腸癌における腫瘍簇出の予後規定因子としての意義に関する検討
長谷 和生望月 英隆小池 聖彦中村 栄秀上野 秀樹横山 幸生栗原 浩幸岩本 一亜吉村 一克山本 哲久吉積 司玉熊 正悦
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 25 巻 11 号 p. 2765-2772

詳細
抄録

直腸癌297例を対象に, 簇出-腫瘍先進部において低~ 未分化な癌細胞が周囲組織間隙に散布するように認められる組織学的所見-について検討した.簇出 (bd) をその程度によりbd0からbd3の4段階に分けると, 中等度以上のbd2, 3症例は116例, 39%に認められた.bd2, 3症例はbd0, 1症例に比し治癒切除率 (58%: 74%, p<0.005), 治癒切除例における再発率 (51%: 19%, p<0.005), 累積5年生存率 (46%: 79%, p<0.001), 累積10年生存率 (38%: 64%, p<0.05) など, いずれも不良であった.一方Dukes分類別にみると, bd2, 3症例はDukes'Aで8%, Bで18%, Cで57%に認められ, 病期の進行とともに頻度が増加した.Dukes'Bでbd2, 3症例の再発率・累積生存率曲線は, Dukes'Cでbd0, 1の症例と差を認めなかった.以上より簇出は癌の進行度, 予後を示す指標として有用なことが示され, bd2, 3症例はDukes分類にかかわらず予後不良群として厳重な術後追跡と集学的治療の必要性が示唆された.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top