1999 年 32 巻 9 号 p. 2238-2242
症例は48歳の男性, 胸部上部食道粘膜癌に対し内視鏡的粘膜切除術を試みたが, 不完全切除となった. これに対して腔内照射を伴う放射線治療を施行した. 放射線治療終了後約9か月後に直径約3cmの巨大な気管食道瘻を生じ, 緊急治療としてカバー付きステント (EMS) を留置し, 肺合併症を予防した. 全身状態の改善と精査を行った後, 手術を行い, ステントを抜去, 食道空置, 有茎大網による食道断端の被覆, 胸骨後食道胃吻合による消化管再建術を施行した. 術後は順調に経過した. 食道癌に対する放射線治療後の合併症のうち, 気管食道瘻は放置すれば致命的である. 本症例においては, 緊急対応時における姑息的治療として, カバー付きステントは非常に有用であり肺合併症を予防することができた. また, この治療により, 病変の正確な診断に基づいた適切な治療方針を決定することができた.