日本消化器外科学会雑誌
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32 巻, 9 号
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  • 小玉 正智
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2197-2207
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    私が食道癌治療に約30年間幸運にも携わることが出来たので, その臨床・研究経験をふまえ21世紀への展望を述べた.
    臨床面からは, (1) 2領域-3領域郭清の問題, 集学的治療の一環として行ってきたCDDP+PEP+VDS3者併用療法に対する臨床的評価と問題点と少量CDDPと5FUの持続投与を中心としたプロトコールの評価, (3) 表在癌, 特にm3からsm1の治療法の選択に関して, 今後の課題を提示した.
    基礎的な立場からは, 食道癌における細胞周期を制御する因子としてcyclin D1, 癌浸潤・転移に関わる因子としてuPA蛋白とPAI-2蛋白の重要性に着目すると共に, 食道癌の遺伝子異常をスクリーニングする方法としてのcomparative genomic hybridization法 (CGH法), およびHUMARA法によるクローン解析の現状を示した. さらに新しい治療法として, 癌特異免疫療法の一環としてのワクチン療法, Antisense療法, および遺伝子導入によるアポトーシス誘導の3つのテーマをとおして基礎的研究の成果と今後の可能性について述べた.
  • 国崎 主税, 高橋 正純, 森脇 義弘, 秋山 浩利, 國廣 理, 藤井 義郎, 野村 直人, 嶋田 紘
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2208-2213
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    右開胸開腹により切除し, 胸骨後で亜全胃再建術を施行した26例を対象に免疫, 栄養学的観点から術後呼吸器合併症 (n=5) の危険因子を検討した. 単変量解析: 合併症群では間接熱量測定計による消費栄養基質の測定で脂肪が有意に増加し, 炭水化物, 蛋白が有意に減少した. 呼吸機能ではFEV1.0/m2が有意に低下した. ロジスティック回帰分析: 脂肪の消費割合, 手術時間, α1-antitrypsin (α1-AT), retinol binding proteinが順に有意な危険因子として選択された. 術前から脂肪異化に傾き, 潜在的飢餓状態にある症例やprotease inhibitorであるα1-ATが低下している症例に過大な侵襲を加えると術後呼吸器合併症が発生しやすいものと考えられた. 栄養代謝を改善し, 免疫能を賦活する術前栄養管理が重要と考えられた.
  • 山並 秀章, 藤谷 恒明, 大内 清昭
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2214-2218
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃全摘・膵脾合併切除 (PS) 施行の進行胃癌130例について臨床病理学的諸因子とNo.10, 11リンパ節転移との関連を検討した. No.10リンパ節転移率は主占居部位, 肉眼型, 組織型, 性別, P因子で有意差が得られ, ロジスティック回帰分析ではこのうち組織型を除く4因子が独立した影響因子として選択された. No.11リンパ節転移率はP因子以外に関連する因子はなく, 多変量解析でも同様の結果だった. よって, 肉眼的漿膜浸潤陽性例のうち (1) 大弯, 前壁の占居部位, (2) 1型, 4型の肉眼型, (3) 女性, のいずれかを示す症例はPSの適応と考えられた. 一方, これ以外の進行癌症例では膵温存脾動脈幹リンパ節郭清を選択してよいと考える.
  • 蒔田 富士雄, 鴨下 憲和, 小林 光伸, 三ツ木 禎尚, 岩波 弘太郎, 橋本 直樹, 竹吉 泉, 大和田 進, 森下 靖雄
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2219-2223
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌 (以下, HCC) 切除術後の肝外再発危険因子を検討し, 肝外転移例の再発様式および治療につき検討した. HCC切除48例中, 肝外転移をきたした8例と肝外転移のない40例を臨床病理学的に比較検討した. 組織型が低分化なHCCに肝外転移が起こりやすい傾向にあり, 治癒切除例や肝内無再発例でも肝外転移を起こした. 術後肝外転移までの平均期間は15.4か月で, 発見動機はCTまたはAFP値の上昇であった. 肝外転移部位はリンパ節が3例, 肺, 副腎が各2例, 大網が1例であった. このうち4例は転移巣の外科的切除 (平均生存期間544日) が可能で, 切除不能例 (116日) に比べ有意に生存期間が延長した. 肝外転移例が孤立性で他に転移巣を認めず, 肝内再発がないか, あっても治療により良好にコントロールされている場合, 外科的切除を含む集学的治療が有効である.
  • 堅田 昌弘, 杉山 保幸, 国枝 克行, 佐治 重豊
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2224-2230
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸腺管腺腫174病変を対象に変異型p53とBcl-2の発現, TUNEL染色によるAI値を免疫組織学的に検討した. その結果, Bcl-2陽性率は異型度が軽度から中等度に進行すると有意に増加し, 高度および早期癌では逆に低下した. 変異型p53陽性率は異型度の進行に伴って増加し, 早期癌ではさらに高値を示した. AI値は正常粘膜に比べ軽度群, 中等度群, 高度群および早期癌がいずれも低値を示した.変異型p53とBcl-2陽性率は腺腫径では6mm以上, 形態ではI sp, I p型が有意の高値を示した.
    以上の結果, 1) 腺腫の増大や異型度の早期にはBcl-2が, 癌化の段階には変異型p53が関与する可能性が示唆された. 2) 異型度が中等度以上で大きさが6mmを越える有茎性腺腫は, 生物学的悪性度が高いと推察された.
  • 手塚 徹, 鈴木 衛, 井上 雄志, 吉田 勝俊, 高崎 健
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2231-2237
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    漿膜 (外膜) 非浸潤大腸癌のリンパ節転移陽性例150例を最遠隔転移陽性リンパ節内の腫瘍占居率が50%未満であった77例 (mild type) と, 50%以上の73例 (massive type) に分類したところ, massive typeではmild typeに比べ, 主腫瘍組織型は低分化型腺癌と粘液癌が占める割合, 転移リンパ節個数 (3.4個, 2.0個), リンパ節最大径 (9.2mm, 5.7mm) に有意差がみられた. 術後リンパ節再発はmild typeの2例 (2.6%) に比べmassive typeでは17例 (23.3%) と有意に高かった. 腹腔内リンパ節の累積5年無再発率はmild type が97.3%, massive typeは73.4%, 1群転移陽性例はそれぞれ96.6%, 76.5%, 2群転移陽性例は100%, 64.3%で, いずれもmassive typeで有意に不良であった. 以上から最遠隔転移陽性リンパ節内の腫瘍占居率は術後のリンパ節再発予測因子となりえることがわかった.
  • 大司 俊郎, 吉田 操, 葉梨 智子, 溝渕 敏水, 坂東 裕子, 草野 佐, 小澤 俊総, 矢川 彰治
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2238-2242
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性, 胸部上部食道粘膜癌に対し内視鏡的粘膜切除術を試みたが, 不完全切除となった. これに対して腔内照射を伴う放射線治療を施行した. 放射線治療終了後約9か月後に直径約3cmの巨大な気管食道瘻を生じ, 緊急治療としてカバー付きステント (EMS) を留置し, 肺合併症を予防した. 全身状態の改善と精査を行った後, 手術を行い, ステントを抜去, 食道空置, 有茎大網による食道断端の被覆, 胸骨後食道胃吻合による消化管再建術を施行した. 術後は順調に経過した. 食道癌に対する放射線治療後の合併症のうち, 気管食道瘻は放置すれば致命的である. 本症例においては, 緊急対応時における姑息的治療として, カバー付きステントは非常に有用であり肺合併症を予防することができた. また, この治療により, 病変の正確な診断に基づいた適切な治療方針を決定することができた.
  • 瀬下 達之, 伊藤 雅夫, 門田 一宣, 水上 智夫
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2243-2247
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性. 嘔気, 食欲不振などの上腹部症状を認めたため入院した. 胸部単純X線で縦隔内に鏡面形成を伴った消化管ガス像を認めた. 上部消化管造影X 線検査で, 臓器軸性胃軸捻転を伴った滑脱型食道裂孔ヘルニアを認めた. また, 幽門部の不整な陰影欠損を認め, 上部消化管内視鏡検査でBorrmann 2型の進行胃癌と診断した. 開腹時, 全胃の縦隔内への脱出を認め, 幽門側胃切除術, 食道裂孔縫縮術を行った. 全胃が脱出した, 臓器軸性胃軸捻転を伴った滑脱型食道裂孔ヘルニアに進行胃癌が合併し, これを切除した症例を経験した. 胃軸捻転のうち臓器軸性軸捻転を伴った胃癌症例は検索しえた限り報告を認めず, 自験例が本邦1例目と考えられた.
  • 北條 隆, 石井 誠一郎, 白杉 望, 北川 雄光, 相浦 浩一, 有沢 淑人, 掛札 敏裕, 納賀 克彦, 福田 純也
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2248-2252
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道壁内転移を認めた幽門部胃癌の1例を報告する. 症例は50歳の男性, 胃部不快感, 嘔吐を主訴として近医受診. 胃癌による幽門狭窄と診断され, 精査, 加療目的にて当院外科入院となった. 上部消化管内視鏡により胃角部小彎から前庭部に2'型胃癌を認めた. さらに食道内, 門歯列より39cmの胸部下部食道にルゴール不染の隆起性病変を認めた. 生検の結果, いずれの病変も低分化型腺癌で, 両病変の粘膜間に連続性は認めなかった. 開腹時, 腹水細胞診検査で悪性細胞を認めたため, 根治性はないと判断し姑息的幽門側胃切除術, B-II再建を行った. 病理組織学的検索では, 口側断端に癌の露出は認めず, 食道の病変は胃癌の転移と考えられた. 術後CDDP, UFT併用療法により, 食道転移巣は消失したが, 7か月目に脳転移により死亡した. 非連続性食道壁内転移を来した胃癌症例の報告はまれで, 大部分は噴門部進行胃癌であり, 幽門部胃癌症例は報告されていない.
  • 徳川 奉樹, 山村 義孝, 鳥井 彰人, 清水 泰博, 小寺 泰弘, 平井 孝, 安井 健三, 森本 剛史, 加藤 知行, 紀藤 毅
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2253-2257
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腫瘍随伴皮膚病変群に属するLeser-Trélat徴候 (以下, L-T徴候と略記) は突然出現し急速にその大きさと数を増すseborrheic keratosisと定義され, 同徴候を伴った内臓癌症例の2例を経験したので報告する. 症例1: 73歳, 男性. 主訴: 皮膚掻痒感. 現病歴: 平成9年3月初旬から頸部の老人性疣贅が短期間に数と大きさを増し, 痒みを伴うようになった. L-T徴候と考え精査したところ胃体上部にIIc病変を認めたため噴門側胃切除術を施行した. 中分化型管状腺癌, stage Iaであった. 症例2: 72歳, 男性. 主訴: 食欲低下. 現病歴: 平成9年1月頃より食欲不振, 便柱の狭小化があり, 同時にL-T徴候を認めた. 2月の検診で便潜血反応陽性のため精査したところRsに2型病変を認め低位前方切除術を施行した. 中分化腺癌, stage IIIaであった. L-T徴候を認めた場合内臓悪性腫瘍を伴っている可能性が高く, 臨床的には重要な所見と考えられた.
  • 本邦報告例の臨床的検討
    土屋 泰夫, 佐野 佳彦, 中村 利夫, 梅原 靖彦, 大久保 忠俊, 中村 達
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2258-2262
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で, 食後右季肋部の疝痛発作のため入院した. 腹部超音波, CT検査で肝前上区域 (S8) に胆管内部の腫瘤陰影とその末梢胆管の拡張を認め, ERCPでは同部に辺縁平滑な陰影欠損像を認めた. この後直接胆管造影で腫瘤陰影の脱落, その後再び腫瘤陰影が確認された. 血管造影で肝S8に腫瘤濃染像を呈したため, 胆管内発育型肝細胞癌を疑い手術を施行した. 肝S8表面の腫瘍を認め, 胆管内腫瘍栓は肝門部まで進展していたため, 右葉切除術を施行した. 主腫瘍の割面は被膜形成なく最大径は2.2cmで腫瘍栓に連続性を認めた. 組織学的にはEdmondson III型の肝細胞癌であった.
    本邦報告例の臨床的検討では, 肝切除例の予後は姑息的治療例より良かった. 自験例のごとく被膜形成が不明瞭な浸潤性の腫瘍で, 2cm前後の肝細胞癌でも胆管内発育を来すため, 占居部位がGlisson鞘に近い例では十分な範囲の切除が必要である.
  • 吉田 克嗣, 岡本 好史, 加藤 岳人, 千木良 晴ひこ, 柴田 佳久, 尾上 重巳, 江崎 稔, 佐野 正行, 深谷 昌秀, 前多 松喜
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2263-2267
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は40歳の女性で, 右上腹部痛を主訴に来院した. 画像診断でAlonso-Lej I型先天性胆管拡張症と診断され, 血管造影で門脈cavernous transformationを認めた. 1995年3月1日胆管切除, 胆嚢摘出, 胆管空腸吻合術を施行した. 発達した側副門脈のため手術操作に難渋し, 約11時間を要し出血量は5,615g であった. 門脈圧は開腹時15cmH2O, 胆管切除後16cmH2Oと変化しなかった. 術後血管造影では小網内, 後腹膜の海綿状血管像が温存されていた. 患者は3年10か月間健在である. 門脈cavernous transformationを伴う先天性胆管拡張症はまれな病態で, 本邦報告例はわずか3例にすぎず, 胆管切除例は自験例が最初である. この病態では, 本来良性疾患である先天性胆管拡張症の手術リスクが高く, 胆管切除により生体に有益な門脈側副血行路の一部が失われるという不利益があるため, 手術適応や術式選択を慎重に決定すべきである.
  • 葦沢 龍人, 北村 慶一, 村野 明彦, 寿美 哲生, 山下 晋矢, 勝又 健次, 山本 啓一郎, 青木 達哉, 小柳 泰久, 海老原 善郎
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2268-2272
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 女性. 主訴は背部痛. US, CTにて膵体部に腫瘤を, ERPでは体部主膵管の狭窄像, 血管造影では脾動脈の広狭不整像を認め, 膵体部癌の診断のもと膵体尾部脾合併切除術を施行した. 腫瘍は3×3.5cmの灰白色楕円形で膨張性発育を示し, 病理組織学的に膵原発の巨細胞癌 (多形細胞癌) と診断された. 自験例を含む本疾患36例の臨床所見は平均年齢63.8歳 (33~84歳), 男女比26: 10, 初発症状は腹背部痛が15例と最も多かった. 占居部位は頭部15例, 体尾部17例と膵管癌と比較して体尾部に好発する傾向があった. 画像所見は, USでは22例中15例が低エコー像, CTでは25例中19例が低吸収像, ERP上9例に狭窄像, 5例に途絶像を認めたが通常膵管癌との差異は認められなかった. 開腹術は20例に施行され治癒切除は8例であった. 予後は33例中25例が1年以内と極めて不良であり, 自験例も術後3か月で癌性悪液質により死亡した.
  • 奥村 権太, 金子 英彰, 前田 壽哉, 福田 六花, 矢吹 由香里, 安彦 篤, 吉岡 輝史, 丹生谷 直樹, 山田 恭司, 岩崎 光彦
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2273-2277
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は41歳の男性. 25歳時, 胃潰瘍により幽門側胃切除術施行している. 夜間, 突然の腹部激痛, 悪心・嘔吐により当院受診. 来院時, 血液生化学的検査にて白血球の増加以外に異常はみられなかったが, 腹部X線検査にてイレウス像, また腹部CT検査にて腸重積像を認め, 腹膜刺激症状を呈したことにより緊急入院, 即日手術となった. 開腹所見では中等量の血性腹水を認めた. 幽門側胃切除術後, Roux-en-Yにより再建されており, Y吻合部肛門側空腸が約13cmにわたりY吻合部に重積していた. 用手整復困難であり, 小腸部分切除術施行した. 腸管粘膜に先進部と成りえるようなポリープなどの異常所見は認めなかった. 本症例のような胃切除後長期を経た, Y吻合部における成人腸重積の発症は極めてまれである. 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 船橋 公彦, 千田 龍也, 前田 利道, 戸倉 夏木, 三木 敏嗣, 鈴木 康司, 松本 浩, 辻田 和紀, 小林 一雄, 吉雄 敏文
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2278-2282
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは膀胱全摘後11年して血便を契機に発見された, 尿管S状結腸吻合に発生した乳頭状腫瘍を経験したので報告する. 症例は58歳の男性で, 血便を主訴に当院を受診した. 入院後の注腸検査と下部消化管内視鏡検査にてS状結腸の尿管吻合近傍に腫瘤の形成を認めたため, 悪性腫瘍を疑ったが, 生検ではGroup2であった. 尿管S状結腸吻合術後のS状結腸に発生する腫瘤には癌の頻度が高いことからS状結腸切除を行った. 組織学的には悪性所見は認められず, 陰窩上皮の乳頭状の増生と間質の浮腫, 炎症を伴う過形成性ポリープと診断した. 膀胱全摘出後の尿管S状結腸吻合部に発生した過形成性ポリープの報告は比較的まれで, 今回, 自験例を含めた報告例についての文献的考察を行った.
  • 伊神 剛, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 太平 周作, 高橋 祐, 雨宮 剛, 上原 圭介, 宮崎 晋
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2283-2286
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性で, 便潜血陽性を契機に精査でRsに発生した直腸カルチノイドと診断し経仙骨的腫瘍摘出術を施行した. 摘出した標本は腫瘍径12×10mm, 壁深達度smの直腸カルチノイドであった. 術後経過は良好であったが, 約3年後に肝外側区域に腫瘍を認め, 精査で肝転移と診断し肝外側区域切除術を施行した. 摘出標本は腫瘍径35×30mmのカルチノイドで前回の組織学的所見と同様の腫瘍であった.
    本邦における腫瘍径20mm未満かつ筋層非浸潤の直腸カルチノイドの肝転移例は, 自験例を含めて6例ときわめてまれで, 異時性の肝転移は自験例のみであり, 若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 夏目 俊之, 岡住 慎一, 高山 亘, 竹田 明彦, 岩崎 好太郎, 笹川 真一, 趙 明浩, 小林 進, 浅野 武秀, 落合 武徳
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2287-2291
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    61歳の男性. 近医にて直腸カルチノイドに対しポリペクトミーおよび経肛門的切除施行9年後のUSにて肝右葉に腫瘤を指摘され当科を紹介された. USおよびCTにて肝S5に約10cm, S7に約5cmの腫瘤を認め, 直腸カルチノイド肝転移または肝嚢胞腺癌の診断で肝右葉切除を施行した. 摘出標本はいずれもカルチノイドの診断であった. 術後6か月目のUSおよびCTで肝S2に約2cm, S4に約5cmの腫瘤を認めた. 血中5HIAAは上昇し, カルチノイド肝転移再発と診断し, 核出術を施行した. 切除標本ではS2の腫瘍はカルチノイド, S4はbilomaであった. 直腸カルチノイド肝転移に対し2度の肝切除を施行し, 現在術後2年3か月, 無再発生存中である. 本邦報告202例の検討を加え報告する.
  • 澤井 照光, 辻 孝, 七島 篤志, 地引 政晃, 山口 広之, 安武 亨, 中越 享, 綾部 公懿
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2292-2295
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は胆嚢摘出術の既往を有する49歳の男性で, 下腹部痛と下痢を主訴として当院を受診した. 大腸内視鏡検査では肛門縁より10cmの直腸に径5mmで二段隆起を伴う隆起性病変が認められた. 腺管状腺腫の診断で内視鏡的ポリペクトミーを施行したところ, 組織学的にはsm massiveの中分化腺癌で, 摘除断端陽性と診断された. 追加腸切除の適応と考えられ, ポリペクトミーの4週後に第2群リンパ節郭清を伴う低位前方切除術を行った. 組織学的に癌遺残はみられなかったものの, 郭清された計16個のリンパ節のうち3個 (#251) に転移が認められた.
    本症例は, 径5mmの小さいIs型癌の中にもsm癌が存在することと, 隆起型病変では特に二段隆起などの所見に注目した詳細な観察を行うことでsm癌を診断することが可能であることを示した点で貴重であると考え報告した.
  • 村山 明子, 早川 直和, 山本 英夫, 牧 篤彦, 川端 康次, 國料 俊男
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2296-2300
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部の悪性黒色腫の1切除例を経験したので報告する. 症例は67歳の男性で, 排便後の出血と腫瘤脱出を主訴として来院. 内視鏡検査にて歯状線直上に青黒い色調の隆起性病変を認め, 生検で悪性黒色腫と診断された. 腹会陰式直腸切断術・D3郭清を施行. 鼠径部リンパ設郭清は施行しなかった. 腫瘤は27×35×15mmで黒色調を呈し, 周囲粘膜に色素のしみだしと色素斑を認めた. 大腸癌取扱い規約に準じれば, P0H0M (-) N (-), mp, ly0, v0, ow (-), aw (-), stage 1であった. 術後化学療法は施行しなかった. 術後約1年2か月経過した現在, 再発の徴候は認めない. 本疾患はその予後が極端に不良のために治療方針に関して議論が分れているが, 本症例では積極的な手術的治療が有効であったと思われる. また, 主病変から離れて存在した色素斑部にも腫瘍細胞の進展を認めたため, 腫瘍周囲の色素変化の注意深い観察と, 十分な距離をとった積極的な手術の重要性が示唆された.
  • 尾関 豊, 立山 健一郎, 角 泰廣, 山田 卓也, 山内 希美, 坂東 道哉
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2301-2305
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の女性. 直腸癌切除後の検診で肝腫瘍を発見された. 超音波, CTおよび血管造影で肝右葉に5cm大の腫瘍と, 肝門部から肝内に異常な走行の脈管を認めた. 直腸癌肝転移の診断で手術を施行した. 術中超音波検査によると門脈内側枝は肝外で門脈本幹から独立して分岐していた. さらに, 内側枝分岐後の門脈右枝から肝門部で分岐し, 中肝静脈の右側を走行する異常な枝 (P8*) が存在した. 外側枝は内側枝と連続せずに, P8*との交通枝を介して血流を受けていた. P8*から外側区域への門脈血流を温存するため, P8*を損傷しないように注意して肝右葉切除術を施行した. 切除した門脈壁の組織学的検索では通常に比べて薄く, 多数の複雑な異常分岐を示した. 遡及的なCT像の検討で門脈本幹は膵前十二指腸後門脈の所見を呈し, 分岐異常との関連が示唆された. 門脈分岐異常例に対する肝切除術では術前, 術中の注意深い観察が必要である.
  • 浅野 英一, 仲 昌彦
    1999 年 32 巻 9 号 p. 2306-2308
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
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