症例は56歳の女性. 夕食に鰯の酢の物を摂取したが, 翌朝心窩部痛および嘔吐が出現したため来院した. 当初は急性胃腸炎との診断にて保存的治療を行ったが, 翌日の腹部US, CTにて空腸に同心円状の層状構造をみとめ腸重積症と診断し緊急手術を行った. 手術所見では, トライツ靱帯から約10cmの空腸に順行性に腸重積症を認めた. 用手的に整復を行ったが, 腸管の浮腫が高度であったため約30cmの空腸を切除した. 切除標本では口側端に発赤した浮腫状の粘膜を認めたのみであったが, 病理組織学的検査で粘膜下層に虫体の迷入と著明な好酸球の浸潤を認め小腸アニサキス症と診断した. 腸アニサキス症はまれではあるが腸重積症も引き起こすことがあることも念頭に置き, 詳細な病歴の聴取, 検査成績, 画像診断など総合的に判断し診療に当たることが重要であると思われた.