2005 年 38 巻 1 号 p. 112-116
症例は63歳の女性で2002年3月, 前医で直腸癌に対し低位前方切除術を施行されたが, 術後早期より膣からの便汁の排泄があり直腸膣瘻と診断された. 2回の瘻孔切除縫合術, 4回の内視鏡的クリッピング術, 人工肛門造設を行うも治癒しえず, 2002年11月, 当科に紹介となった. 2003年月, 手術を施行した. 瘻孔部の切除を行い, 右薄筋の筋皮弁を用い膣後壁, 直腸瘻孔部を充填形成した. 術後経過は良好で問題となるような機能障害も出現しなかった. 2003年6月人工肛門を閉鎖. 現在, 術後約1年を経過したが瘻孔再発の徴候はない. 直腸術後の難治性直腸膣瘻に対する, 薄筋筋皮弁による外陰部形成術は機能障害の出現もなく患者のQOL向上に非常に貢献しうる術式と考えられた.