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三好 正義, 橋口 陽二郎, 上野 秀樹, 藤本 肇, 望月 英隆
2005 年38 巻1 号 p.
1-6
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
はじめに: 現行の大腸癌取扱い規約による下部直腸 (以下, Rb と略記) の壁深達度a1, a2の判定基準は不明瞭であり, TNM 分類ではともにT3 と扱われ, 細分化はされていない. 今回, 筋層外垂直浸潤距離 (depth beyond mp: 以下, DBM と略記) に着目し, 他の病理学的因子とともに多変量解析を行い, 予後因子としてのDBM の意義を検討した. 対象と方法: Rb癌初回手術症例中 ('77.3~'97.9), 病理組織学的にT3かつ根治度A であった196 例 (a1 129例, a2 67例) を対象とし, 摘出標本においてDBMを測定し, 他の病理学的因子とともに予後について多変量解析を行った. 結果: 1) DBM が6mm 以上 (n=69) の5 生率は6mm 未満 (n=127) に比べ有意に不良であった (71%; 50%, p=0.001). 2) 単変量解析で有意差を認めた他の予後不良因子は, (1) リンパ管侵襲高度, (2) 静脈侵襲高度, (3) 簇出高度, (4) リンパ節転移陽性で, 3) 多変量解析では, リンパ節転移陽性 (p=0.005, 95%Cl 1.25-3.55, HR 2.1), DBM (6mm 以上)(p=0.043, 95%Cl 1.01-2.52, HR 1.6) が独立した予後因子として選択された. 結論: Rb 癌pT3 症例では, DBM が6mm 未満と6mm 以上とで予後に有意差がみられ, リンパ節転移とともに独立した予後因子であった. 筋層外浸潤距離による壁深達度分類はa1, a2 に代わる客観性の高い分類として臨床的有用性が高いと思われる.
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植村 守, 土岐 祐一郎, 石川 治, 上田 潤, 良河 光一, 森本 真人, 高地 耕, 宮代 勲, 今岡 真義
2005 年38 巻1 号 p.
7-12
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は57歳の男性で, 進行食道癌Lt, T3N1M1 lym (#13#16) にて胸部食道全摘, 後縦隔胃管再建, 2領域+16番リンパ節郭清術を施行した. 術後経口摂取開始と共に混濁胸水を認め乳糜胸と診断. 絶食中心静脈栄養 (術後18-58日), 胸管結紮術 (35日), minomycinおよびOK432注入による胸膜癒着 (38-49日), 胸腔左鎖骨下静脈および胸腔腹腔シャント造設術 (64日) と治療行うも1,000-3,000ml/日程度の胸水が持続した. 2回のリンパ管シンチグラフィーではリンパ漏出部位同定は困難であった. 術後121日にリンパ漏出部位同定目的でリピオドールによるリンパ管造影を施行. リンパ漏出部位は同定できなかったが, 造影後急速に胸水は減少し8日目には胸水流出は止まり, 術後158 日に退院となった. リピオドールリンパ管注入は漏出部位同定困難な乳糜漏に対する効果の高い新しい治療法の一つとして期待される.
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板野 聡, 寺田 紀彦, 堀木 貞幸, 遠藤 彰, 大多和 泰幸
2005 年38 巻1 号 p.
13-18
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は52歳の女性. 主訴は食後の腹満感, 嘔吐と体重減少. 近医の上部消化管造影X線検査で横隔膜ヘルニアと診断され, 当院を紹介され来院した. 当院の検査では, 食道裂孔ヘルニアで胃前庭部と十二指腸球部がヘルニア内に脱出嵌頓して通過障害を来していることが診断された. 内視鏡的整復が困難と判断され開腹手術を行い, 嵌頓した胃前庭部と十二指腸球部を還納後, ヘルニア門を縫合閉鎖して手術を終了した. 術後の上部消化管造影X線検査では正常な解剖学的位置関係に復しており, 通過も良好であった. 食道裂孔ヘルニアの定義では, 胃の漿膜を含む全層が胸縦隔内へ脱出する状態をいい, 胃以外の腹腔内臓器が脱出することは極めてまれとされている. 文献検索では, 十二指腸球部を内容とした食道裂孔ヘルニアの報告は4例のみで自験例は5 例目であり, 極めてまれであると考えられたので報告した.
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齋藤 心, 細谷 好則, 荒井 渉, 俵藤 正信, 横山 卓, 平嶋 勇希, 倉科 憲太郎, 永井 秀雄, 塚原 宗俊, 斎藤 建
2005 年38 巻1 号 p.
19-24
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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症例は82歳の男性で, 嚥下困難を主訴に当科入院となった. 内視鏡検査で下部食道にほぼ内腔を占める1型腫瘍が認められ, 生検にて未分化癌と診断された. 遠隔転移を認めず開胸開腹下に手術を施行した. 中下部食道~胃上部を切除し, 食道と胃管で再建した. 組織学的に食道非小細胞型未分化癌と診断され, pT2, pN1, M0, Stage IIであった. 術後3か月で多発肝転移・腹腔内リンパ節再発を認めた. CDDP と5-FUによる化学療法を施行したところ, 転移巣はPartial Responseとなった. 術後9か月の現在外来通院中である. 食道非小細胞型未分化癌の本邦報告例は15例であり比較的まれな疾患である. 予後不良とされるが, 15例中6例に化学療法が施行され奏効率は67%(4/6)であった. 放射線単独, 手術単独療法での長期生存例の報告もあり, 集学的治療による予後の改善が期待できる.
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佐藤 弘, 坪佐 恭宏, 伊藤 以知郎
2005 年38 巻1 号 p.
25-30
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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2002年9月から2003年12月までに, 食道癌に対する根治目的放射線化学療法後のサルベージ手術を5 例に施行した. 104Rリンパ節転移遺残に対する右頸部郭清術施行例と, 胸部中部食道の原発巣遺残と106recRリンパ節転移遺残に対する食道切除再建手術施行例の2例には再発を認めていないが, その他の3例は術後2か月以内の再発を認めた. 症例1は, 胸部下部の原発巣遺残と腹部リンパ節転移に対し, 下部食道切除・胃全摘を施行した. 術後1か月後に膵背側のリンパ節再発を認めた. 症例2は, 胸部中部食道癌の106rec Rのリンパ節転移遺残に対し, 右頸部郭清術を施行. 術後1か月後に原発巣の再発を認めた. 症例3は, 頸部食道癌遺残に対し, 咽喉食摘術を施行. 術後2か月で肺転移を認めた. 再発した症例も術前評価では根治が望めると判断したが, 結果的には早期に再発した. 現段階ではサルベージ手術の適応・術式・成績などのデーターが不十分であるため, 十分なinformed consentが重要である.
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河本 真大, 高島 勉, 仲田 文造, 埜村 真也, 井上 透, 山下 好人, 大平 雅一, 若狭 研一, 平川 弘聖
2005 年38 巻1 号 p.
31-35
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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患者は54歳の男性で, 嚥下時違和感を主訴に当院を受診した. 術前診断は中部食道後壁腫瘍で, 生検では低分化扁平上皮癌と診断された. 右開胸開腹食道亜全摘術を施行した. 腫瘍は2型で, 2.5×2.0cm大であった. 病理組織学的検査では小細胞癌で食道外膜に浸潤しており, また一部に軟骨肉腫の像も認めた. また, 免疫組織学的染色で上皮性マーカーであるCAM 5.2が癌腫と肉腫の移行部で陽性であり, 小細胞癌成分から肉腫成分へ分化した可能性が示唆された. 術後3 週間のlow dose FPによる化学療法を施行後, 退院となった. 術後15か月現在, 再発を認めていない. 食道小細胞癌と癌肉腫はどちらも頻度は低いが術前診断が困難で, 悪性度が高い疾患である. 食道原発の癌肉腫の癌腫成分が小細胞癌であった例は極めて珍しく, ここに報告した.
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高橋 健, 中村 慶春, 内田 英二, 柏原 元, 李 栄浩, 宮下 正夫, 田尻 孝, 笠井 源吾
2005 年38 巻1 号 p.
36-41
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
医療技術などの進歩に伴って脊髄損傷患者の生命予後は改善し高齢化が進んでいる. これに伴い悪性腫瘍併発例の報告が増加しているが, 消化器癌併発例の報告はほとんど認められない. 今回, 我々は脊髄損傷患者の胃癌併発例を経験したので報告する. 症例は60歳の男性で, 昭和46年に脊髄損傷受傷, 平成14年6月に腹痛および黒色便が出現した. 上部消化管内視鏡を施行し胃体中部前壁の胃癌と診断されたため胃全摘術を施行した. 術直後より減圧管からの排液量が多く, 第3病日からは排便が連日認められたにもかかわらず減圧管排液量は漸増し (最大で825ml/日), 上部と下部の消化管蠕動運動の乖離が認められた. しかし胃管の留置期間を延長し, 適宜, 腸管運動促進剤を投与しながら経口摂取量を調節していくことで合併症なく第40病日に退院となった. 脊髄損傷患者に腹部手術を施行する際は, 脊髄損傷の病態生理を理解し注意深い術後管理が必要であると考えられた.
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山田 秀久, 森田 高行, 藤田 美芳, 宮坂 祐司, 仙丸 直人, 押切 太郎, 加藤 紘之
2005 年38 巻1 号 p.
42-46
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は63歳の男性で, 1994年8月3日胃癌に対して幽門側胃切除術を施行した. 総合所見は中分化型腺癌, fT1 (SM), N1, H0, P0, M0, fStage IBであった. 1996年7 月の腹部CT で胃十二指腸吻合部から膵頭部前面にかけて腫瘤を認め, その後徐々に増大傾向を示したが他部位に再発巣を認めず1997年11月6日膵頭十二指腸切除術を施行した. 腫瘤は胃十二指腸吻合部から膵頭部にかけて一塊となっており膵との境界は不明瞭で剥離困難であった. 病理学的検査で胃癌の局所再発と判定された. 再発切除後6年6か月経過した現在, 再発徴候なく健在である. 本例は再発胃癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行し長期生存が得られたまれな症例と考え若干の文献的考察を加え報告した.
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澤田 成彦, 本田 純子, 長尾 妙子, 清家 純一, 梅本 淳
2005 年38 巻1 号 p.
47-51
発行日: 2005年
公開日: 2011/08/23
ジャーナル
フリー
Leser-Trélat徴候は疼痒感を伴う脂漏性角化症が急速に出現し悪性腫瘍を合併するもの, と定義されている. 今回, 急速に増大する脂漏性角化症を契機に早期胃癌を認め根治術を得た症例を経験したので報告する. 患者は80歳の男性で, 頸部から胸部にかけ疼痒感を伴い急速に増加する皮疹が出現し, 本院皮膚科を受診した. Leser-Trélat徴候を疑い上部消化管内視鏡施行し, 早期胃癌と診断し, 幽門側胃切除術を施行した. 胃の3 か所に独立した早期癌が認められた. 現在, 術後再発は認めていない. 数か月以内に急速に増加, 増大する脂漏性角化症が認められた場合には本徴候を考慮し, 積極的に内臓悪性腫瘍の検索を行うべきである.
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前田 好章, 本間 重紀, 近藤 正男, 佐藤 裕二, 藤堂 省
2005 年38 巻1 号 p.
52-56
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は48歳の男性で, 立ち眩み, 息切れ, 左上腹部痛を主訴に受診し, 腹部超音波検査およびCTにて左上腹部腫瘤および多発肝腫瘤を指摘された. 消化管内視鏡検査にて十二指腸水平部に不整形に隆起性病変をみとめ, 同部位の生検にてc-kit陽性の紡錘形細胞がみられ, 十二指腸原発GIST, 多発肝転移と診断した. 十二指腸空腸部分切除, 結腸合併切除, 肝部分切除術施行した. 術後経過は良好で, 退院時よりImatinib mesilate (STI571) 400mg/dayを投与開始した. 術後12か月経過し再発を認めず, 外来通院中である. 転移を有するGISTであっても, 手術とImatinib mesilate投与により良好な予後が期待できる可能性が示唆された.
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白幡 康弘, 川岸 直樹, 関口 悟, 大河内 信弘, 里見 進
2005 年38 巻1 号 p.
57-62
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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フリー
家族性高コレステロール血症・ホモタイプは約100万人に1人の遺伝的疾患であり, 生後より高度な高コレステロール血症を生じ, 四肢関節部の皮膚黄色腫が特徴的である. 幼少より重度の動脈硬化性病変をもたらし, 20歳未満にて心筋梗塞などが発症し, 致死的となる. この疾患に対して肝移植は効果的治療法であり, 欧米においては脳死ドナーからの肝移植が行われ, 効果を得ている. 今回, 我々はヘテロタイプの父親をドナーとする家族性高コレステロール血症・ホモタイプの2歳5か月の男児に対する生体肝移植を経験した. 術前血清コレステロール値は800mg/dlを超えていた. 肝移植後, 高脂血症薬の併用も行い, コレステロール値は250-300mg/dlまで低下させることが出来, 有効な治療効果を得ることが出来た. 現在, 移植後43か月を経過し, 食事制限も行わず, 問題なく成長している. 本疾患ホモタイプに対して, ヘテロタイプをドナーとして生体肝移植を行うことは, 生体肝移植の機会を増やし, 予後の改善に寄与すると考えられる.
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森 光生, 里 悌子, 山本 健太郎, 関 博章, 石川 廣記, 堤 寛
2005 年38 巻1 号 p.
63-68
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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フリー
胆嚢原発の腺内分泌細胞癌はまれな疾患であるが, 転移リンパ節が扁平上皮癌の組織像を呈し, 特異な病理組織像と考えられた症例につき報告する. 症例は70歳の女性で, 上腹部痛を主訴に初診した. 画像診断では胆嚢底部に主座を置く36×15mm大の腫瘍と上膵頭後部に25mm大の転移リンパ節を認めた. 肝床部切除を伴う胆嚢摘出術およびD2 リンパ節郭清を施行した. 病理組織学検査では, 胆嚢粘膜には広範囲に粘膜内高分化型腺癌が存在し, 連続して胆嚢底部では内分泌細胞癌を, 胆嚢頸部では中分化型管状腺癌を認めた. 上膵頭後部の転移性リンパ節は扁平上皮癌の組織像を呈した. リンパ節転移・肝転移のため術後32か月死亡した. 腺癌(粘膜内高分化型腺癌および中分化型管状腺癌)・扁平上皮癌・内分泌細胞癌と多種の組織型が併存する胆嚢腺内分泌細胞癌は極めてまれであるため報告した.
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奥野 敏隆, 長谷川 寛, 京極 高久, 佐野 勝洋, 池川 隆一郎, 高峰 義和, 林 雅造, 橋本 公夫
2005 年38 巻1 号 p.
69-74
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は62歳の男性で, 結核性胸膜炎の治療歴と胃癌, 胆石の手術歴がある. 黄疸の精査目的に紹介受診した. 腹部超音波検査で膵頭部に5.2cmの不整形の低エコー腫瘤を認め, 腹部CTでは辺縁がリング状に造影された. 黄疸はまもなく軽快し, その他全く無症状であったが, 胸部X線上の肺浸潤影, ツベルクリン反応陽性などから結核性リンパ節炎による胆管狭窄と診断, 確定診断目的に開腹した. リンパ節摘出, 総胆管十二指腸吻合を行った. 組織学的に中心乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を認め, 結核性リンパ節炎と診断した. 術後の喀痰培養で抗酸菌を検出した. 術後抗結核剤投与を行い, 経過良好である. 肺外結核のなかでも胆管狭窄を来す腹部リンパ節結核はまれであり, 本邦報告例は8例のみである. また, 腹部, 消化管疾患においても, 結核は常に念頭に置くべきことを再認識させられた.
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篠原 永光, 小山 隆司, 栗栖 茂, 梅木 雅彦, 北出 貴嗣, 高橋 英幸, 若槻 真吾
2005 年38 巻1 号 p.
75-79
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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腹部CTで偶然発見され, 上腸間膜静脈に浸潤した膵腺房細胞癌の1例を経験した. 症例は42歳の男性で, 血尿で近医受診し, 精査中腹部CTで右上腹部に巨大腫瘍を指摘され当科紹介となった. 入院時現症では右上腹部に腫瘤を触知したが黄疸は認めなかった. 血液生化学検査では, 軽度の肝機能障害を認めたが, CEA, CA19-9は正常範囲であった. 腹部CTで肝・腎に接して大きさ9×6×10cmで内部不均一な腫瘍を認めた. 腹部血管造影検査では, 同部にtumor stainを認め, さらに上腸間膜静脈に陰影欠損を認めた. 以上より上腸間脈静脈に腫瘍塞栓を伴う膵頭部悪性腫瘍と診断し上腸間脈静脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理診断は好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞が腺房形-充実性に増殖しており, 腺房細胞癌と確定診断された. 術後肝転移など再発は認めていないが, 再発には今後も十分な注意が必要と考えている.
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種村 匡弘, 伊藤 壽記, 打越 史洋, 川本 弘一, 松田 宙, 菰田 弘, 文元 雄一, 北川 透, 西田 俊朗, 松田 暉
2005 年38 巻1 号 p.
80-85
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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症例は38歳の男性で14 歳時よりインスリン依存型糖尿病を発症しインスリン治療を受けていた. 30歳時に慢性腎不全が悪化し血液透析が導入され, 34歳時には膵臓移植地域適応検討委員会の移植適応認定を受け, 日本臓器移植ネットワークに登録された. 2001年1月8日脳死ドナーからの臓器提供を受け脳死下膵腎同時移植が施行された. しかし, グラフト膵の門脈血栓症を併発し術後7日目にグラフト膵の摘出を余儀なくされた. 同年11月8日, 膵単独移植を希望しネットワークに再登録された. 2003年10月19日, 脳死ドナーの出現を受け, 膵臓再移植を施行した. 術後経過は良好で, 術後33日には軽快退院できた. 本症例は臓器移植法施行後, 脳死下膵臓再移植を施行した本邦第1例目で, また多発性嚢胞腎にて血液透析中の患者で, かつ腎移植登録待機中, 脳死ドナーとなり膵臓を提供した貴重な症例である.
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栗山 直久, 世古口 務, 三枝 庄太郎, 湯浅 浩行, 井戸 政佳, 伊藤 史人, 山碕 芳生, 野田 雅俊
2005 年38 巻1 号 p.
86-91
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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フリー
症例は45 歳の男性で, 健診目的に近医受診し, 腹部X 線検査にて左上腹部に鶏卵状の淡い石灰化を認め, 精査加療目的に当院を紹介された. 腹部US, CTで膵体部~尾部に著明な石灰化をもつ充実性成分と, 直径4cm大の嚢胞性部分を有する病変を認め, 嚢胞部分はMRIでT1強調で高信号, T2強調で低信号を示した. 膵嚢胞性腫瘍の診断にて膵体尾部切除術を施行. 摘出標本では, 膵体部の充実性腫瘤に連続して, 膵尾部では出血壊死物質を含む嚢胞性病変で, 組織学的には充実成分は比較的よく揃った細胞増殖を認め, 一部に偽乳頭状の配列も認められ, コレステロール結晶の沈着, 間質での石灰化が極めて高度であった. 電顕所見では細胞は多数のミトコンドリアを有し, チモーゲン様の顆粒を少量認め, 免疫組織化学染色ではNSE, α1-antitrypsin が陽性であった. よって膵solid-pseudopapillary tumorと診断した.
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北村 好史, 横尾 直樹, 北角 泰人, 東 久弥, 吉田 隆浩, 長田 博光, 塩田 哲也, 岡本 清尚
2005 年38 巻1 号 p.
92-97
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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膵内分泌腫瘍は, 悪性であってもslow growingなものが多いとされる. 今回, 筆者らは多発肝転移を伴う膵ソマトスタチノーマに対し, 原発巣切除術後肝動脈塞栓術を繰り返すことにより, 長期にわたり良好な臨床経過が得られている1例を経験したので報告する. 症例は40歳の女性で, 平成10年9月, 全身倦怠感と体重減少で当院を受診した. 諸検査の結果, 糖尿病の存在と共に, 膵体尾部に5cm 大の辺縁不正で内部不均一な腫瘍, および肝臓に多発性の腫瘍を認めた. 血漿ソマトスタチン値が56pg/mlと上昇を認めたことより, 膵ソマトスタチノーマおよび多発肝転移と診断し, 脾・門脈合併切除を伴う膵体尾部切除術を施行した. 術後肝転移巣に対し肝動脈塞栓術を繰り返した結果, 局所再発や肝転移巣の増大は認めず, 術後5年以上経過した現在も健在である.
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寺岡 均, 竹内 一浩, 櫻井 克宣, 松永 伸郎, 竹村 哲
2005 年38 巻1 号 p.
98-101
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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虫垂が大腿裂孔に嵌頓した極めてまれな1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は53歳の女性で右鼠径部の圧痛を伴う腫瘤を主訴に近医受診し, ヘルニア嵌頓の診断にて当院紹介となった. 右鼠径部に約5cm大の有痛性腫瘤を認め, 同日大腿ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行した. ヘルニア内容は壊死した虫垂であり, ヘルニア根治術および虫垂切除術を施行した. 術後経過は良好で第4病日退院となった. イレウス症状を伴わない嵌頓ヘルニアの場合, 虫垂嵌頓も考慮すべきであると考えられた.
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北東 大督, 瀧 順一郎, 上野 正義, 吉田 英晃
2005 年38 巻1 号 p.
102-107
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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回腸に多発したカルチノイドの1例を経験した. 症例は64歳の男性で, 定期検診の腹部エコー, CTで4cm大の腹腔内腫瘍を指摘された. 小腸造影で回腸に3×2cmの隆起性病変を認めたので, 小腸腫瘍の診断で手術を行った. 術中所見では, エコー, CTで指摘された腫瘤は, 小腸腫瘍ではなく, 腸間膜根部付近の5cm大の腫瘤であった. また, その付近の回腸に3cm大と2cm大の腫瘤を認め, 小腸腫瘍と, そのリンパ節転移の可能性を考慮して, 腸間膜合併の回腸部分切除を施行した. 標本上30×20mm, 15×10mm, 3×3mm 大の粘膜下腫瘍様の病変を認め, 組織学的検査では, いずれもカルチノイドであった. また, 腸間膜根部の腫瘤は, カルチノイドの転移を認める腫大リンパ節であった. 回腸カルチノイドは本邦ではまれな疾患で, 中でも多発例はわずかに4例が報告されているのみである.
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板橋 幸弘, 馬場 俊明, 加藤 智, 佐々木 睦男
2005 年38 巻1 号 p.
108-111
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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症例は36歳の女性で, 間欠的な強い腹痛で近医を大の腫瘤を指摘されたが原因不明のまま退院した. 再度腹痛がを受診した. 腹部超音波およびCTで右上腹部の可動性のない腫瘤にた. 翌朝より血便を伴い, 血清CPK値1,003IU/Lと著明に上昇し回腸末端を先進部とし, 横行結腸中央付近に達する回盲部型腸重積重積を解除したが, 重積されていた右側結腸全体の腸管壁が著明に硬除術を施行した. 盲腸から上行結腸にかけて後腹膜に固定されてい思われた. 切除標本で重積の原因となりうる器質的変化を認めず, 重積腸管が広範囲で, 長時間経過している場合には腸管壁の不可解除しても腸切除は必要と思われた.
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水谷 雅臣, 布施 明, 牧野 孝俊, 森谷 敏幸, 鈴木 明彦, 磯部 秀樹, 神賀 正博, 木村 理
2005 年38 巻1 号 p.
112-116
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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症例は63歳の女性で2002年3月, 前医で直腸癌に対し低位前方切除術を施行されたが, 術後早期より膣からの便汁の排泄があり直腸膣瘻と診断された. 2回の瘻孔切除縫合術, 4回の内視鏡的クリッピング術, 人工肛門造設を行うも治癒しえず, 2002年11月, 当科に紹介となった. 2003年月, 手術を施行した. 瘻孔部の切除を行い, 右薄筋の筋皮弁を用い膣後壁, 直腸瘻孔部を充填形成した. 術後経過は良好で問題となるような機能障害も出現しなかった. 2003年6月人工肛門を閉鎖. 現在, 術後約1年を経過したが瘻孔再発の徴候はない. 直腸術後の難治性直腸膣瘻に対する, 薄筋筋皮弁による外陰部形成術は機能障害の出現もなく患者のQOL向上に非常に貢献しうる術式と考えられた.
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藤 信明, 谷口 弘毅, 天池 寿, 岡 克彦, 稲葉 一樹, 内藤 和世
2005 年38 巻1 号 p.
117-120
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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人工肛門造設術後の後期合併症としては, 狭窄, 傍ストーマヘルニア, 腸脱出 (人工肛門からの翻転脱出) などがある. 今回, 傍ストーマの腹壁破裂により小腸脱出を認めた極めてまれな合併症を経験した. 症例は86歳の男性で, 1997年8月にイレウスに至ったS状結腸癌に対して緊急にてハルトマン手術を施行されていた. 再発や合併症なく外来通院中の2002年12月, 腹痛を主訴に本院救急受診した, 左側腹部のストーマに接した腹壁が破裂し小腸脱出および絞扼状態となっており, 緊急手術にて絞扼小腸切除および人工肛門再造設術を施行した. ストーマ近傍の創感染を合併したが, 保存的に軽快した. 今回のような傍ストーマの腹壁破裂により小腸脱出を認めた後期合併症は, 本邦での報告例がなく, また致命的になりうる合併症であるといえる.
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壁島 康郎, 田野 敦子, 亀山 哲章, 戸泉 篤, 田村 洋一郎, 影山 隆久
2005 年38 巻1 号 p.
121-125
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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完全直腸脱に対する外科治療において, 腹式手術は会陰式と比較し, 良好な治療成績が報告される. しかし, 手術侵襲は高度となり, その選択に躊躇する場合も少なくない. 我々は高齢者, 特に併存疾患を有する完全直腸脱症例に対する低侵襲治療として, Procedure for Prolapse and hemorrhoids (PPH) +Thiersch手術の有用性を検討した. 2001年から2003年に本法を施行した8例を対象とした. 観察期間中央値は25か月であった. 手術時間は28.5分, 出血量は極少量, 術後入院期間は10日で, 手術合併症は1例も認めなかった. 本法は局所麻酔でも手術が可能であり, 出血もほとんどなく, 呼吸・循環動態への影響は極めて少ないと考えられた. 完全直腸脱症例に対する低侵襲治療として, 本法は治療選択肢の1つになると考えられた.
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市倉 隆, 帖地 憲太郎, 三枝 晋, 矢口 義久, 坂本 直子, 望月 英隆
2005 年38 巻1 号 p.
126-130
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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胃癌治療に携わる医師のすべてが「胃癌治療ガイドライン」(以下, GL と略記) に興味をもっているか, 受容しているかは疑問である. 今回, 埼玉県内の胃癌治療に携わる医師がGLをいかに評価しているかにつき, 中小規模の施設を含めて調査した. 埼玉県内の全麻手術を日常的に行っている105施設の主任外科医に対し, GLに関する無記名式のアンケート調査票を郵送した. 年間の胃癌治療件数, GLに記載されている標準的治療に関する質問を選択式で設定した. 回答は64施設 (61%) から得られた. GLを読んだことがない, 少しだけ読んだとの回答が各々5%, 14%にみられ, これらを併せた頻度は手術数20例/年未満の施設の方が20例/年以上の施設に比べ高かった (p=0.04). 内視鏡的治療の適応, 早期胃癌に対する縮小手術, 進行癌に対するD2郭清をほぼ妥当と評価したものは各々80%, 69%, 69%にとどまった. これらの回答と各施設の手術件数との有意な関連はみられなかった. ほぼ半数がGLの発刊後も治療方針はまったく以前と変わらないと回答した. ガイドラインは必ずしも十分に読まれてはおらず, 受容度も十分高いとはいえない. 胃癌治療に携わるすべての医師に対するGLの啓発が, またGL改訂に際しては幅広い意見の調査が必要と考える.
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大谷 吉秀, 北島 政樹
2005 年38 巻1 号 p.
131-134
発行日: 2005年
公開日: 2011/06/08
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