2005 年 38 巻 6 号 p. 690-695
成熟型腸間膜奇形腫の1例を経験した. 症例は45歳の男性で, 腹痛を主訴に来院し, 腹部CT, 超音波検査で右下腹部に境界明瞭な一部石灰化を有する嚢胞性病変を認めた. 血清CEA, CA19-9はそれぞれ138ng/ml, 53U/mlと高値で, 悪性腫瘍も否定できなかった. 開腹すると回盲部腸間膜に9×5cm大の嚢胞性腫瘍を認めた. 被膜に覆われており浸潤傾向を認めなかったため, 腸管を切除せず腫瘍切除術のみ施行した. 術後の病理組織診で良性の成熟型奇形腫と診断された. 血清CEA, CA19-9ともに術後2か月でほぼ正常化した. 高CEA, CA19-9血症を伴う腸間膜奇形腫は, 我々が検索した範囲では他に報告を認めなかった. 腸間膜腫瘍の鑑別には奇形腫も念頭におく必要があり, 腸間膜奇形腫の治療は腫瘍摘除で十分であることから, 拡大手術を含めた過大な侵襲は避けるべきであると考えられた.