日本消化器外科学会雑誌
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十二指腸潰瘍穿孔に対する肝円索を用いた腹腔鏡下被覆術の1例
柴田 裕中川 康彦小玉 雅志
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2006 年 39 巻 5 号 p. 556-560

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抄録

症例は42歳の男性で, 右側腹部痛を主訴に来院した. 胸部X線検査・腹部CT検査にて腹腔内遊離ガス像を認め, 内視鏡検査で十二指腸潰瘍の穿孔と診断し, 腹腔鏡下に緊急手術を施行した. 皮下鋼線を右上腹部に2か所刺入し, 吊り上げ法で行った. 臍下部(5mm, scope port), 心窩部(11mm), 右上・下腹部・左上腹部(5mm)にポートを挿入し, 腹腔内を観察すると, 十二指腸球部前壁に穿孔部を確認した. 大網は炎症のため短縮・硬化しており, 大網被覆術は困難と判断した. 臍側で切離し, 腹壁からの遊離した肝円索を用いて穿孔部を被覆した. 術時間は120分, 術後経過は良好であった. 術後14日目の内視鏡検査で潰瘍はH1-H2 stageとなっていたが, Helicobacter pylori陽性であったため除菌療法を行った. 術後6週目の内視鏡検査で潰瘍病変は認めなかった. 十二指腸潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下穿孔部閉鎖術において, 肝円索は被覆組織として有用と考えられた.

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