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松田 明久, 古川 清憲, 高崎 秀明, 鈴木 英之, 菅 隼人, 鶴田 宏之, 松本 智司, 進士 誠一, 田尻 孝
2006 年 39 巻 5 号 p.
529-535
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
はじめに: stage IV大腸癌の予後因子を臨床病理学的に検討した.
方法: stage IV大腸癌161症例を対象とし臨床病理学的検討を行い予後規定因子を解析した.
結果: 根治度はB37例 (23.0%), C110例 (68.3%), 不明14例 (8.7%) で, 非治癒因子数は単独111例 (68.9%), 複数50例 (31.1%) であった. 単独因子症例の内訳は肝転移64例 (57.7%), 腹膜転移21例 (18.9%) の順で多かった. 多変量解析を行った結果, 独立した予後規定因子として根治度, 組織型, 深達度, 非治癒因子数, リンパ管侵襲の5因子が抽出された. 5年以上生存した13例はすべて非治癒因子数が単独, かつ高または中分化腺癌症例で, 1例 (肝転移に対し異時的肝切除施行) を除き根治度Bであった.
考察: 予後不良とされるstage IV大腸癌においても, 非治癒因子数が単独の高または中分化腺癌症例に対して積極的な転移巣切除を行い根治度Bが得られれば長期生存が期待できると思われた.
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角田 明良, 中尾 健太郎, 神山 剛一, 平塚 研之, 成田 和広, 山崎 勝雄, 渡辺 誠, 鈴木 直人, 保田 尚邦, 草野 満夫
2006 年 39 巻 5 号 p.
536-543
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
目的: リンパ節転移陰性の大腸癌患者の予後は概ね良好であるが, その成績内容には大きな較差がある. 今回TNM stage II (stage II)症例を対象として, 検索リンパ節数の遠隔成績に与える影響を検討した.
方法: 1981年から2000年までに経験した大腸癌症例のデータベースよりstage II・III症例を抽出した. 生存率の比較はKaplan-Meier法とLog-rank testを用い, 多変量解析はCox regression modelを適用した.
結果: stage II229例とstage III204例が解析の対象となった. stage II症例の検索リンパ節数は, 年齢(P=0.0035), 緊急手術の有無(P=0.0010), および癌占居部位(P=0.0030)に影響を受けた. 同様にstage III症例では, 性(P=0.0108), 深達度(P=0.0080)に影響を受けた. stage II症例では検索リンパ節数の減少によりHazard比が増大したが, stage III症例では増大しなかった.
考察: stage II症例の遠隔成績は検索リンパ節数に依存した. 検索リンパ節数の少ないstage II症例は, 補助化学療法の適応になる可能性がある.
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藤田 加奈子, 川口 誠, 三浦 裕, 藤田 亘浩, 穂苅 市郎
2006 年 39 巻 5 号 p.
544-549
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は52歳の男性で, 主訴は嚥下困難. 上部消化管内視鏡検査で切歯列より32~36cmに境界明瞭, 表面結節状の隆起性病変を認め, 生検により神経内分泌癌と診断された. 胃小彎リンパ節腫大を認めたが, 遠隔転移, 縦郭リンパ節腫大はなく, 開胸下食道切除術を施行した. 病理組織学的検査所見で深達度はpSM, ie (+), ly1, v0, pIM0, pN2 (#7)であった. 免疫組織学的に腫瘍は, 神経内分泌マーカーCD56, NSE, S-100蛋白, chromogranin A, Synapto-physinが陽性であった. 術後は約1か月半で多発肝転移, 腹腔内リンパ節再発を認め, 手術から約2か月後に死亡し, 高悪性度の腫瘍と考えられた. 腫瘍形態の詳細な観察では, 高分化・上皮様部位と, 低分化・肉腫様の部位が混在し, ATBF1は前者では核主体, 後者では細胞質主体の染色性を示した.
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高橋 知秀, 近藤 俊彦, 重松 千普, 須田 久雄
2006 年 39 巻 5 号 p.
550-555
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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右胃大網動脈を使用した冠状動脈バイパス手術後に発症した下部進行胃癌に対して, 脾動脈-右胃大網動脈グラフト間の血行再建とD2郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した症例を経験した. 症例は73歳の男性で, 既往歴として7年前に狭心症に対する冠状動脈バイパス術(3枝: 両側内胸動脈, 右胃大網動脈)を施行されている. 今回, 突然の黒色便を主訴に受診し, 精査したところ, 幽門前庭部に進行胃癌が発見された. 2004年2月本術式を施行し良好な経過が得られた. 本術式は腹腔内からのアプローチのみで冠状動脈への血行再建を施行できる点, 右胃大網動脈を根部処理するため進行癌に対して確実な6番リンパ節領域の郭清ができる点に特長がある. 検索した範囲で, 同様の術式の報告はなく, 今後右胃大網動脈を使用した冠状動脈バイパス手術後に発症した進行胃癌に対する手術法として選択される術式のひとつとなりうると考えられた.
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柴田 裕, 中川 康彦, 小玉 雅志
2006 年 39 巻 5 号 p.
556-560
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は42歳の男性で, 右側腹部痛を主訴に来院した. 胸部X線検査・腹部CT検査にて腹腔内遊離ガス像を認め, 内視鏡検査で十二指腸潰瘍の穿孔と診断し, 腹腔鏡下に緊急手術を施行した. 皮下鋼線を右上腹部に2か所刺入し, 吊り上げ法で行った. 臍下部(5mm, scope port), 心窩部(11mm), 右上・下腹部・左上腹部(5mm)にポートを挿入し, 腹腔内を観察すると, 十二指腸球部前壁に穿孔部を確認した. 大網は炎症のため短縮・硬化しており, 大網被覆術は困難と判断した. 臍側で切離し, 腹壁からの遊離した肝円索を用いて穿孔部を被覆した. 術時間は120分, 術後経過は良好であった. 術後14日目の内視鏡検査で潰瘍はH1-H2 stageとなっていたが,
Helicobacter pylori陽性であったため除菌療法を行った. 術後6週目の内視鏡検査で潰瘍病変は認めなかった. 十二指腸潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下穿孔部閉鎖術において, 肝円索は被覆組織として有用と考えられた.
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新見 行人, 明石 諭, 長尾 美津男, 高 済峯, 岡山 順司, 中島 祥介
2006 年 39 巻 5 号 p.
561-565
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は55歳の男性で, 平成8年2月前区域を中心とする巨大肝細胞癌に対して拡大右葉切除術施行した. その後, 残肝再発, 両側肺転移を来し, TAEを2度, 肺切除を2度施行した. 平成13年11月脾臓に径2.5cmの腫瘍を認めたため, 精査目的に平成14年1月入院. 腹部超音波検査にて腫瘍は径5cmにまで増大していた. 血管造影上, 腫瘍濃染は認めなかったが, 肝細胞癌脾転移と診断し, 手術を施行した. 腫瘍は大部分が脾被膜に覆われて存在していたが, 一部は横隔膜に浸潤しており, 横隔膜・肝臓の一部も合併切除した. 切除標本においても, 腫瘍はほぼ全体が脾実質内に存在していた. 術後3年経過した現在, 無再発生存中である. 肝細胞癌の単発性脾転移はまれであり予後不良例が多いが, 本症例のように他病変がコントロール可能であれば, 切除により良好な予後が期待できる.
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石部 敦士, 望月 康久, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
2006 年 39 巻 5 号 p.
566-571
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は51歳の男性で, 健康診断で肝機能異常があり近医で肝腫瘍を指摘され当科入院となった. 入院時検査結果でCA19-9 284U/dlと高値であった. 造影CTでは肝左葉に径10cmの中心部は低吸収域, その周囲は被膜様の造影効果を有する腫瘍を認めた. MRCPで末梢胆管の拡張を認め, 胆管細胞癌の診断で肝左葉切除を施行した. 肉眼的に門脈腫瘍栓を認めた. 病理組織学検査ではnucleocytoplasmic (N/C)比の高い未分化な円形細胞が髄様に増殖し, 一部ロゼット形成を認めた. 免疫組織化学検査で塗銀染色, synaptophysin陽性であり神経内分泌癌と診断した. 術後13か月現在無再発生存中である. 肝臓原発の神経内分泌癌は非常にまれな疾患で予後不良とされており, 今後も注意深く経過観察する必要がある.
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坂本 英至, 長谷川 洋, 小松 俊一郎, 広松 孝, 田畑 智丈, 河合 清貴, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 土屋 智敬, 松本 直基
2006 年 39 巻 5 号 p.
572-576
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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まれなcommunicating accessory bile ductの1例を経験したので報告する. 症例は72歳の女性で, 十二指腸乳頭部癌による閉塞性黄疸のため経皮経肝胆道ドレナージを施行した. 胆管造影所見にて左右肝管が低位で合流し, 肝門付近で左右肝管はこれと同じ太さの胆管によって交通していた. 胆管は右肝管に合流していた. 膵頭十二指腸切除術を施行し, 胆管は胆.管合流部直下で切離し, 左右肝管をおのおの空腸と吻合した. 本症例はGoorらのいうcommunicating accessory bile ductに相当すると考えられる. 本症例では肝門部で胆管がcircuitを形成し, circuit部分がいずれもほぼ同じ太さのため, どの部分をcommunicating accessory bile ductとすべきかに疑問が残った. 同様の症例を集積し, Goor, Couinaudの分類を踏まえcommunicating accessory bile ductの簡便な新分類を試みた.
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永生 高広, 初瀬 一夫, 緒方 衝, 相田 真介, 川原林 伸昭, 西山 潔, 深柄 和彦, 望月 英隆
2006 年 39 巻 5 号 p.
577-582
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は78歳の女性で, 右季肋部痛を主訴に近医を受診し, 超音波検査で胆.内に5cm大の腫瘤を認めたため, 当科紹介受診となった. 各種画像検査より, 約5cm, 有茎性の血流豊富な胆嚢隆起病変を認め, 胆嚢癌を疑い平成13年1月に肝S4a, 5切除+肝外胆管切除+D2リンパ節郭清を行った. 病理組織検査の結果, グリコーゲンに富み, 核小体明瞭で淡好酸性の胞体を有する腫瘍細胞が, 胞巣状充実性に浸潤増殖し結節性病変を形成していた. 画像診断学的に他臓器に腫瘍像を認めず, 免疫組織化学的にはEMA陽性, CEA一部陽性であり, 胆.原発明細胞腺癌と診断した. 深達度mp, no, stage Iであった. 術後4年経過しているが, 無再発生存中である. 胆脳の明細胞腺癌はまれであり, 予後との関連について文献的考察を加え報告した.
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金子 和弘, 小山 俊太郎, 野村 達也, 田中 典生, 武田 信夫, 下田 聡, 若木 邦彦, 畠山 勝義
2006 年 39 巻 5 号 p.
583-588
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は75歳の男性で, 下血を主訴に入院した. 十二指腸第二部乳頭対側の粘膜下腫瘤からの出血の診断で内視鏡的止血術, 血管造影下塞栓術を試みたが止血困難であり, 緊急手術となった. 十二指腸部分切除にて腫瘤を切除し, 術中迅速病理検査で十二指腸壁内の迷入腺管から発生した高分化型腺癌と診断されたため, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除を追加施行した. 術後の免疫組織学的検索にて異所性膵より発生した膵癌と診断した. 異所性膵に発生した悪性腫瘍の報告は非常にまれであり, 術前に正確な診断をつけることは困難である. 異所性膵の手術においては悪性化の可能性を念頭におき, 術中迅速病理検査を行い手術方針を決定することが必要である.
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広松 孝, 秋田 昌利, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 河合 清貴, 田畑 智丈, 青葉 太郎, 都築 豊徳
2006 年 39 巻 5 号 p.
589-595
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は30歳の男性で, 心窩部痛にて入院した. CT上, 膵体尾部に42×39mmの充実性腫瘍を認めた. Endoscopic retrograde pancreatography, magnetic resonance cholangiopancreatographyでは, 主膵管が完全途絶していた. 超音波内視鏡検査では内部不均一で周囲がlow, 腹部血管造影では腫瘍濃染像は認めず, 脾動脈にencasementを認めた. 確定診断のため, 超音波内視鏡検査下穿刺細胞診を行いendocrine tumorと診断された. 手術は膵体尾部脾合併切除術を施行した. 病理診断は低分化型膵内分泌細胞癌であり, CD56強陽性, synaptophysin強陽性, chromogranin A一部弱陽性であった. 主膵管は強度に浸潤を受け, 腫瘍細胞に置き換わり, 脾動静脈にも腫瘍浸潤を認めた. 術後14か月現在, 再発徴候は認めていない. 本症は30歳と若年発症であり, 内分泌細胞癌でありながら主膵管浸潤浸潤を認めたまれな症例である. 膵内分泌腫瘍と診断し, 主膵管閉塞を認めた場合には悪性を疑う必要がある.
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大内田 次郎, 千々岩 一男, 旭吉 雅秀, 永野 元章, 甲斐 真弘, 近藤 千博, 内山 周一郎, 盛口 清香, 浅田 祐士郎
2006 年 39 巻 5 号 p.
596-601
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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膵管内乳頭粘液性腺癌 (以下, IPMCと略記) と胆管癌の同時重複例を切除した.患者は76歳の男性で, 皮膚黄染, 右季肋部痛を主訴に近医を受診し, 肝内胆管拡張, 膵頭部の嚢胞性病変を認め当科入院となった. CT, MRCPでは膵頭部に3cm大の多房性嚢胞性腫瘍が存在し, 膵病巣と近接する下部胆管に狭窄を認めた. ERCPで主乳頭の開大と粘液の排出および膵頭部に主膵管と交通する多房性嚢胞性病変と主膵管内に粘液を認め, 尾側膵管は拡張していた. 胆管狭窄部の生検標本の病理診断は腺癌であった. EUSでは嚢胞内に壁在結節を認めなかった. 以上より, IPMNを合併した胆管癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 組織学的には下部胆管は深達度ssの胆管癌嚢胞性病変は非浸潤型のIPMCで同時性重複癌と診断した. また, 16b1リンパ節の転移を認めfstage IVaであった. 胆管癌とIPMCの重複癌は1例の報告しかなく, まれであるので報告する.
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疾患概念に関する考察も含めて
高橋 裕, 山口 哲哉, 武田 亮二, 坂田 晋吾, 山本 道宏
2006 年 39 巻 5 号 p.
602-607
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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症例は66歳の女性で, 腹部膨満感と左下腹部痛で受診し, 腹部CTで多量の腹水と大網腫瘤, 血中CA-125 (6,250U/ml) 高値, 腹水中に腺癌細胞, 卵巣は正常大の所見から腹膜漿液性乳頭状腺癌 (peritoneal serous papillary carcinoma; 以下, PSPC) として開腹した. 広範な播種病変と大網腫瘤を認めdebulking surgeryを施行した. 腫瘍細胞の形態と免疫組織化学染色Ber-EP4 (+), CEA (+), calretinin (-), CK5/6 (±) の結果からPSPCと診断された. PSPCはserous surface papillary carcinomaとも呼ばれるが, surfaceは本来卵巣表層上皮surfaceepitheliumを意味していたと考えられた. 卵巣表面に小病変を認めても腹膜原発となる診断定義にも留意すべきと思われた. 婦人科ではPSPCの腹腔内播種病変の多中心性同時性発生説が提唱されているが, ミュラー管遺残組織である精巣鞘膜の漿液性乳頭状腺癌にorchiectomyを施行後, 腹水貯留と大網腫瘤を発症した泌尿器科の症例が文献中に認められ, 異時性転移性播種例の存在を示唆するものと考えられた.
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野田 英児, 前田 清, 井上 透, 西原 承浩, 八代 正和, 山田 靖哉, 山下 好人, 澤田 鉄二, 大平 雅一, 平川 弘聖
2006 年 39 巻 5 号 p.
608-613
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例1は35歳の男性で, 主訴は右季肋部痛, 肛門痛である. 16歳時クローン病と診断されている. 上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に狭窄を認め, 経管小腸造影検査では回腸末端部に狭窄および回腸末端から盲腸に至る瘻孔を認めた. 大腸内視鏡検査では横行結腸の狭窄を認め, 同部からの造影検査で結腸肝彎曲部から十二指腸球部への瘻孔を確認した. 腹部CTでは肝周囲に膿瘍形成がみられた. 症例2は23歳の男性で, 主訴は発熱, 右側腹部痛である. 14歳時クローン病と診断されている. 18歳時上行結腸の狭窄で結腸右半切除術を施行. 内視鏡下造影検査にて回腸結腸吻合部-十二指腸瘻を認めた. いずれも入院のうえ保存的治療を試みたが改善せず, 症例1では結腸右半切除術, 症例2では吻合部切除を施行し, 瘻孔切除, 十二指腸単純閉鎖と大網被覆を行った. 結腸-十二指腸瘻の報告例は少なく, 症例を供覧し, 本邦報告例を文献的考察を加え報告する.
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大塚 敏広, 安藤 道夫, 倉橋 三穂, 正宗 克浩
2006 年 39 巻 5 号 p.
614-619
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
フリー
症例は62歳の男性で, 主訴は腹満感, 心窩部痛であった. 大腸内視鏡検査, 注腸造影X線検査, 腹部CTで, 上行結腸粘膜下腫瘍による腸重積症の診断で手術を施行した. 盲腸の腫瘍を先進部として横行結腸脾彎曲部まで重積を来していた. 用手的に整復できず, 右半結腸切除術を施行した. 腫瘍は良性の神経鞘腫であった. 成人の腸重積の原因は腫瘍といった器質的疾患が多い. 大腸原発の神経鞘腫は少なく, 中でも盲腸症例はまれである. 今回, 我々は盲腸神経鞘腫により腸重積を来した症例を経験したので報告する.
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竹下 浩明, 辻 孝, 澤井 照光, 日高 重和, 柴崎 信一, 田中 賢治, 七島 篤志, 安武 亨, 中越 享, 永安 武
2006 年 39 巻 5 号 p.
620-625
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は45歳の男性で, 生体腎移植後12年経過していた. 腹痛で発症し, 白血球増多の進行のため腹部CTを行ったところ, 後腹膜気腫と腹腔内遊離ガスを認めた. 穿孔部位はS状結腸であり, ハルトマン手術を行った. 病理学的検査では憩室穿孔の疑いであった. 術前, シクロスポリン, ミゾリビン, メチルプレドニゾロンによる3剤併用免疫抑制療法を受けており, 術後早期も調節し続行した. 重篤な合併症は起こさず救命し, また移植腎機能も温存された. 腎移植後は拒絶反応抑制のため, 免疫抑制剤を使用しており免疫不全状態となっていることや, 副腎皮質ステロイドによる組織の脆弱性, 低腎機能による組織治癒能の低下など, 治療を行ううえで, 通常とは異なる病態がみられる. 本邦での腎移植後の大腸穿孔の報告は, 本例を含め12例あり, 生存9例 (うち移植腎機能喪失1例), 死亡2例であった. 男性・献腎移植例・S状結腸に多い傾向があった.
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猪熊 孝実, 池松 禎人, 木田 栄郎, 脇 慎治, 小澤 享史, 兼松 隆之
2006 年 39 巻 5 号 p.
626-630
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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症例は62歳の男性で, 2000年1月, 最大径7cmの3型盲腸癌に対して結腸右半切除術を施行した. 病理組織学的には高分化型腺癌, 漿膜下層浸潤, 222番リンパ節 (4群) に転移を認めpStage IVであった. 術後1年5か月後に直腸膀胱窩に約3cm大の腫瘍形成を認め腹膜播種転移と診断した. しかし, 他に転移を認めなかったため, 2001年6月, 骨盤内臓器全摘術を施行した. 摘出標本において腫瘍は直腸膀胱窩の腹膜外結合織内に限局していた. リンパ節構造はなく, 直腸粘膜, 膀胱粘膜, 壁側腹膜の各面に癌の露出を認めなかった. 腹水細胞診も陰性であり, 盲腸癌の腹膜外結合織への転移再発と診断した. このような転移再発形式は極めてまれであるため報告し, 今後の症例蓄積と転移ルート解析を期待したい.
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黒田 新士, 青木 秀樹, 塩崎 滋弘, 原野 雅生, 佐々木 寛, 小野田 正, 大野 聡, 桧垣 健二, 二宮 基樹, 高倉 範尚
2006 年 39 巻 5 号 p.
631-636
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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乳糜腹水は術後に比較的まれに認められる合併症とされているが, 蛋白・リンパ球漏出に伴う栄養・免疫面での問題を生じうる. 2001年4月から2004年3月までに当科において施行された肝膵切除術後に乳糜腹水を認めた症例を対象とし, その臨床的特徴および治療法について検討を行った. 乳糜腹水の合併は204例中7例 (3.4%) に認められ, 決してまれな合併症ではないと考えられた. また, 乳糜腹水量1日最多量と血中最低アルブミン値を2変数とした回帰分析では有意が認められ, 乳糜腹水量の減少が栄養状態の改善に必要であることが示唆された.治療法としては, オクトレオチドの投与が有効で, 投与を試みた6例全例において3日以内に著明な乳糜腹水量の減少を認めた. 栄養状態の改善のためにも, 早期からの積極的なオクトレオチドの投与が必要と考えられた.
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鍛 利幸, 山中 健也, 大久保 遊平
2006 年 39 巻 5 号 p.
637-642
発行日: 2006年
公開日: 2011/06/08
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1999年1月から2004年9月まで, 腹膜偽粘液腫の6例に対して拡大減量手術を行った. 男性2例, 女性4例, 年齢は45歳から71歳, 初回手術2例, 再手術4例であった. 6例中4例において肉眼的全切除が可能であった. Sugarbaker procedureに従って, 結腸切除, 大網切除, 脾摘, 左横隔膜下腹膜切除, 右横隔膜下腹膜切除, 胆摘と盲.切除, 胃切除, 直腸低位前方切除, 子宮付属器切除, 骨盤腹膜切除を必要に応じて行った. 抗癌剤の腹腔内投与を3例に行い, 1例に縫合不全を認めた. 組織型はいずれも粘液.胞腺腫~悪性度の低い腺癌であった. 全切除した4症例はまだ術後観察期間が短いものの現在まで無再発で経過しており, 腫瘍が残存した2症例もquality of life (以下, QOL) は著明に改善された. 腹膜偽粘液腫に対する拡大減量手術は比較的安全に行いうること, 完全切除により治癒を望める可能性があり, 不完全切除でもQOLの改善に有効であることが示唆された.
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