症例は78歳の女性で, 約1年間にわたり嘔気, 腹部膨満, 右下腹部痛をくり返し, 2006年8月に当科を受診した. 大腸内視鏡検査にて上行結腸に全周性の狭窄性病変を認めた. 粘膜面に上皮性の腫瘍を疑う所見は認めず, 生検にても悪性所見を認めなかった. 狭窄部のfiberの通過は不能であった. 腫瘍マーカーはCEA 1.0ng/ml, CA19-9 11ng/mlと正常範囲内であった. 長期間にわたる狭窄症状の改善の目的に, 結腸右半切除術を施行した. 切除標本では狭窄部位の大腸壁は肥厚し, 憩室を伴っていた. 粘膜面は滑らかで上皮性の腫瘍を疑う所見は認めなかった. 病理組織学的検査にて粘膜下層から固有筋層に豊富な粘液結節を伴う腫瘍を認めた. 腫瘍は粘膜面には認めず, 大腸憩室と連続しており, 大腸憩室由来のmucinous adenocarcinomaと考えられた. 大腸憩室から大腸癌が発生することは非常にまれであり, 文献的考察を加えて報告する.