2001 年 27 巻 1 号 p. 102-106
甲状腺微小乳頭癌 (PMC) の予後はきわめて良好で, そのほとんどは生涯無害に経過するものと考えられているが, 偶然見つかったPMCをどう取り扱うかについては必ずしも一定の基準がない。当科でもかつてはPMCに対し積極的に対処し, 1976-93年に178例のPMCの手術を施行したが, 遠隔転移や臨床的に明らかなリンパ節転移および反回神経麻痺といった症候を伴わない148例中には原病死はなかった。そこで, 95年以降, 無症候性のPMC患者に対しては, 充分な説明のもと, 超音波検査でチェックしつつ経過観察する方針とした。99年までに35名の患者 (44病巣) から Informed Consent が得られた。1-10年の経過観察で腫瘍径が増大したものが8例 (18%) あったが, 明らかなリンパ節転移や遠隔転移, 他臓器浸潤を生じた症例はなく, この方針は妥当であると考えられた。特に超音波画像上, 限局型の症例, 辺縁石灰化した症例は腫瘍の大きさの変化が乏しかった。