日本医真菌学会雑誌
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総説
眼科真菌症
宇野 敏彦
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2008 年 49 巻 3 号 p. 175-179

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抄録

真菌性角膜炎は眼科医にとって,診断および治療に窮する感染性角膜炎である.真菌性角膜炎の起因菌は酵母菌であるCandidaFusarium を代表とする糸状菌に大別される.Candida は結膜嚢内に常在しており,先行する上皮障害,コンタクトレンズ装用,抗菌薬・ステロイド点眼などの要因により発症する.角膜実質を融解し進展する傾向が強い.一方,糸状菌によるものは土壌・草木の関連した外傷が原因であることが多い.角膜実質の層構造を破壊することなく眼内に進展しendothelial plaqueおよびhyphate uncerなど特徴的な所見を呈し,臨床的診断が可能である.
 治療は全身投与を前提とした抗真菌薬を点眼用に自家調整して行うことが多い.Candida が起因菌であればアゾール系薬剤を中心に点眼を行う.糸状菌によるものは眼科用として唯一上市されているピマリシン眼軟膏など,多剤を併用して加療するも奏功しない場合が多く,治療的角膜移植が必要になる場合もある.
 角膜炎の起因菌となりうる糸状菌は多彩である.FusariumAspergillus は角膜表層から眼内へ容易に進展するのに対し,Alternaria など,長期間角膜表層に限局するもの(“表層型”)も存在する.糸状菌の温度感受性が病巣の進展を規定している可能性が考えられた.

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© 2008 日本医真菌学会
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